(英エコノミスト誌 2021年5月15日号)

本誌エコノミストのモデルがパンデミックの真の姿を明らかにする。次に取るべき方策を提案したい。
本誌エコノミストは今週号で、新型コロナウイルス感染症「COVID-19」による本当の犠牲者数の推計値を公開している。
パンデミックの真の姿を伝える数字だ。
だが、そこには緊急に対応せよという警告も含まれている。ワクチンが貧しい国々にも供給されなければ、インドで今繰り広げられている悲劇的な光景がほかの場所でも繰り返される恐れがある。さらに数千万人の命が失われる。
本誌は死亡者数の記録から人口構成に至る121の変数について公表済みのデータを集め、それらの相関関係を見つけ出し、不明なデータの空白を埋めた。
そのようにして構築したモデルによれば、COVID-19による死者の数はすでに710万~1270万人に達している。
ベースの推計は、1000万人の人が、COVID-19がなければまだ生きていただろうと思われることだ。
この「超過死亡」の計算結果は、政府による公式推計値の3倍以上にのぼる。
だがそれにもかかわらず、公式推計値は致死率や国家間の比較など、この病気のほとんどの統計の基礎になっている。
公式数字をはるかに上回る途上国の犠牲者
本誌の取り組みで判明したことのうち最も重要なのは、貧しい人々がCOVID-19で受けている打撃はこれまで知られていた以上に大きいということだ。
公式の統計は、パンデミックが波のように襲来したことや、米国と欧州に大打撃を与えていることを示唆している。
南米諸国は大きな打撃を被っているものの、そのほかの発展途上国は軽微なダメージで切り抜けているように思われた。
本誌のモデルは、まるで異なる物語を描き出している。
犠牲者をすべて数え上げると、パンデミックは互いにつながった裕福な国々から、孤立していることの多い貧しい国々へと容赦なく広がっていったことが分かる。
そしてその過程で、世界全体の1日当たりの死亡者数も急増した。