ワクチン接種が本格化する今こそ接種のオペレーションを詰めるべき(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(星良孝:ステラ・メディックス代表取締役、獣医師)

 ワクチン接種が混乱を極めている。やり方の稚拙さについて担当大臣も失敗を認めるほどの状況だ。そもそもワクチン開発で先行する海外の事例を学ぼうとする姿勢を全く感じない。ワクチン接種についてはいくつか論文が出ているので、今回はあるべき論を考察する。

 世界で最も評価の高い医学書とされている米ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌は、3月の段階で「ワクチン接種は大規模に展開する必要がある」と指摘していた。この中に詳細が出ているので見ていこう。

 まず、小規模なワクチン接種は失敗につながるとある。米国では2020年12月からワクチン接種が始まっている。論文によると、2021年1月11日までに2210万回分のワクチンが配布されたが、接種回数は670万回にとどまった。

 日本の場合、5月12日時点でも約527万回に過ぎず、圧倒的な失敗と言えるが、米国でも当初は失敗と認識されていたのだ。その理由について、小さな施設で細々とワクチン接種をしようとしたからだと指摘している。

「当初はクリニック、薬局、地方自治体の公衆衛生担当者など、地域に密着した既存の医療機関を活用してワクチンを接種していた。だが、従来の医療機関を利用するだけでは、パンデミックを阻止するのに十分なスピードでワクチンを接種することはできない」

 結局のところ、ワクチン接種は大規模に実施しなければ効果が半減するということだ。「従来型の接種会場に加えて、スタジアム、アリーナ、コンベンションセンターなど、ハイスループットな大規模会場での集団接種を組み合わせたハイブリッドアプローチが不可欠」という。

「ハイスループットな大規模会場」は分かりにくい言葉だが、大量のワクチン接種を高速で実施できる会場という意味だ。その理由として次のように解説している。