トヨタの電動車に関する展示。愛知県豊田市のトヨタ会館で2021年3月、筆者撮影

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 トヨタ自動車は2021年5月12日、2021年3月期決算説明会をオンラインで実施した。

 説明会は第1部「決算説明および質疑」と第2部「当社の取組みおよび質疑」という2部構成で行われたが、どちらにも豊田章男社長は出席しなかった。トヨタの社長が本決算説明会に出席しないのは異例である。

 その理由について質疑の際に記者から質問があったが、「日本自動車工業会での会長職としての発言が注目されることが多いこともあり・・・」と豊田氏の最近の活動に触れつつも、決算報告に出席しない理由についての明確な説明はなかった。

 少し前を振り返ってみると、トヨタが2020年11月6日にオンラインで実施した第2四半期決算説明会では豊田社長が出席した。中間決算の記者会見に社長が出席するのはトヨタでは異例である。

 その6カ月前、新型コロナが自動車市場に多大な影響を与えていた2020年5月時点で、トヨタ以外の日系自動車メーカー各社が「コロナ禍で社会情勢の先行きが見通せない中、通期見通しの公表を差し控える」情勢だったのに対して、トヨタは「危機的状況だからこそ、裾野が広い自動車業界にとって基準が必要」という判断から、トヨタ・レクサスの販売台数800万台、営業利益5000億円という目標を掲げた。結果的に販売は下期以降、南アジアなど一部の地域を除きグローバルで段階的に回復し、通期実績は販売台数が908万7000台、また営業利益は当初の基準の4倍以上となる2兆1977億円を達成している。