閑古鳥が鳴くソウル・明洞

 新型コロナの世界的な感染拡大が始まって1年が過ぎた。当初は「数カ月以内には」「年内には」など収束を楽観視する声が多く聞かれたが、韓国の感染者数は現在進行系で増え続けている。

 ワクチン接種についても、アストラゼネカ製ワクチンの副反応を巡る問題やワクチン確保の問題に直面しており、政府が当初、掲げていた「秋まで集団免疫を獲得する」という目標も、もはや絶望的という見方が広まっている。

 その中で、ジワリジワリと感じられるのが経済の悪化による廃業ラッシュだ。筆者の身近でも感じられるようになっている。

ソウルの繁華街、明洞の空き店舗率が60%に

 5月8日の朝鮮日報に衝撃的な記事が掲載された。ソウルの繁華街・明洞(ミョンドン)界隈にある路面店の60%が空き店舗や休業状態になっているという記事だ。

 明洞と言えば、ソウルでは観光の代名詞的なエリアで、ショッピングやグルメなど、ソウルに来たなら必ず足を運ぶ場所だ。本来であれば、ストリートに雑貨や軽食を売る屋台がずらりと並び、その合間を縫うように多くの人が行き交う光景が明洞を代表する光景だが、今では昼夜を問わず閑散としており、「賃貸物件」「休業中」といった貼り紙が至るところで見られる。

 この状況はソウルの明洞に限ったことではなく、梨泰院(イテウォン)や江南(カンナム)、さらには釜山や済州島など地方都市や観光地にまで波及している。

 例えば、第二の都市・釜山では、南浦洞(ナンポドン)や西面(ソミョン)といった代表的な繁華街でも廃業による空き店舗が目立つ。今年に入ってから何度か現地に足を運んでいるが、訪れるたびにその数は増え続けている。

 こうした光景は繁華街に限ったことではなく、住宅街や郊外にある店舗も同様だ。特に、雑居ビルの路面店のみならず、2階、3階とすべてのフロアが空き室になっているところもある。ソウルや釜山の繁華街、済州島などは中国人を中心とした海外からの観光客で地元経済が支えられていた。その観光客が消えた影響は甚大だ。

 前述の朝鮮日報の記事には、明洞で店舗や屋台を経営してきた人々の話として、「新型コロナもあるが、中国からの観光客に依存をし過ぎ、地元の客を明洞から遠ざけてしまったこともある」という声が紹介されていた。外国人観光客に依存していたのはコロナ禍前の日本も同様だ。

 これに加えて、文在寅政権下で高騰した不動産価格や賃貸料も経営者には重い負担となってのしかかっている。結果、休業や廃業を余儀なくされ、多重苦の状態にある。