ワクチン接種が遅れているのは確かだが、正当な努力をあげつらうのはおかしい(写真:アフロ)

(山本一郎:個人投資家、作家)

「独自」と銘打った、スクープの体裁を取る誤報が朝日新聞系の週刊誌「AERA」から発せられ、そのタイトルの煽り具合もあって、ヤフーのトップ記事に掲載されてしまうというアクシデントがありました。

【独自】高齢者1万人「接種センター」日本旅行、人材派遣会社に約37億円で自衛隊が“丸投げ”〈dot.〉(AERA dot.)
https://news.yahoo.co.jp/articles/cd1b6ed5c5d0a67170941bd4eb95976e63758318

 この記事はそもそも「独自」でも何でもない。まず本件AERA記事(5月10日掲載)よりも前に、日経新聞が5月7日に、どういう体制でこの自衛隊による大規模接種会場が運営される予定であるかを報じています。

新型コロナ: 民間看護師200人参加 自衛隊の大規模接種会場(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA076IB0X00C21A5000000

 同じく、共同通信も5月9日に、「確保予定の200人の民間看護師数も踏まえ、対応可能な最大数を算出」するとしたうえで、この自衛隊が運営する「大規模接種センターは、土日祝日を含めて自衛隊が運営。医官約70人、看護官約200人を、全国の自衛隊病院や部隊から集めて東京と大阪の会場に派遣」するとしています。

 つまり、民間看護師や会場運営を委託された民間企業は、あくまで自衛隊が行う接種事業に対して、足りない部分を補うために人員確保したものであって、AERA記事がタイトルで煽りたてる「丸投げ」とは程遠い、非常に一般的な公的業務の民間発注に過ぎなかったことが明らかです。