バングラデシュの首都ダッカ(撮影:姫田 小夏)

(姫田 小夏:ジャーナリスト)

 日本以外のアジア諸国は、世界を巻き込む米中の覇権争いをどう受け止めているのだろうか。日本で長年東南アジア研究に携わってきたバングラデシュ出身の社会学者・倉沢宰氏が、アジアの視点で中国一極体制となるリスクや日本の存在感、近未来のアジアの秩序を展望した。

倉沢 宰(くらさわ・さい)氏
社会学者、元立教大学大学院特任教授
 バングラデシュ名サイエド・ムルトザ。ダッカ大学大学院(M.A.)修了後、1970年に国費研究生として来日。慶応義塾大学大学院博士課程で学び、1982年から愛知学泉大学、2010年から立教大学大学院およびセカンドステージ大学で教鞭をとる。現代社会変動論、東南アジア地域研究、文化摩擦論、多文化共生社会が専門。1984年に帰化し日本国籍を取得。

中国がリードするアジアの時代に

――米中の覇権争いがますます熾烈さを増していますが、近未来はどうなると予想されますか。

倉沢 私は「アジアの時代になる」と感じています。振り返れば米国の覇権が形成する「パクスアメリカーナ」の前には「パクスブリタニア」がありました。大英帝国に日没はないと言われましたが、第2次世界大戦で完全に米国に取って代わられ、冷戦後は米国のスタンダードによるグローバル化が進みました。今後米中両陣営がヘゲモニーを争う中で、中国が世界的パワーとして米国を追い抜くことが考えられます。