米国は台湾の防衛を条約で義務付けられているわけではないが、もし中国が侵攻すれば、米国は軍事力と外交・政治両面での決意を試されることになる。

 この地域を担当する米軍第7艦隊が援護に駆けつけなければ、中国は一夜にしてアジアを支配する大国となる。

 世界中の同盟国が、もう米国を頼れないことを思い知る。そうなればパクス・アメリカーナ(米国による平和)は崩壊する。

平和を維持してきた「矛盾」

 台湾海峡での紛争回避の方法を理解するには、過去数十年間にわたって平和を維持してきた「矛盾」から話を始めなければならない。

 中国政府は、自分たちには中国統一を実現する義務があると主張している。侵攻という最後の手段を使ってでも、だ。

 一方、かつては島が中国の一部(ただし、共産党政権でない中国の一部)であることを認めていた台湾人は、独立を宣言するには至らないものの、中国からの分離を強調する政権を選ぶようになった。

 そして米国は、北京の中国政府を承認しつつも、台湾を中国の敵対的な行動から守ってきた。

 このような互いに対立する考え方はすべて、フィッツジェラルドの見解を受け継いだ外交官たちがのんきに「現状」と呼ぶものに組み込まれている。

 実際には、これは激しく煮えたぎる疑心暗鬼の源泉だ。

 最近になって変化したのは、中国が25年かけて強化してきた台湾海峡での軍事力の臨界点に対する米国側の認識だ。

 中国海軍はここ5年間で主要な艦艇と潜水艦を計90隻進水させている。西太平洋で米国が有する艦艇の4~5倍に当たる数だ。

 また、中国は最新式の戦闘機を年間100機以上製造している。