バイデン首相が主催した気候変動サミットのオンライン会議。40の国・地域の首脳などが参加した(写真:ロイター/アフロ)

 今や、気候変動対策は外交のトップアジェンダだ。4月22日、23日開催の気候変動サミットで、菅首相は「2030年の温室効果ガス46%削減」の目標を打ち出した。気候変動対策を最重要視するバイデン政権に応えたものとされる。動向が注目された日米首脳会談でも、バイデン大統領は「日米が野心的な気候変動対策の牽引役となる」と意欲を示した。

 気候変動対策が「コスト」とされ、外交での優先度も低いアジェンダであったのは昔の話だ。新冷戦が叫ばれて久しい米中が協調できるアジェンダとして見る向きもある。だが、実態はそう単純ではない。気候変動対策の巧拙は、今や国の産業競争力や安全保障に直結する。それを理解する米中は主導権を狙う。また、気候変動対策で米中に先行する欧州の存在も忘れてはならない。バイデン政権が主導し、40カ国・地域の首脳が参加した気候変動サミットでは、脱炭素化を巡る米中欧の思惑が交錯した。

気候変動サミットで見えたバイデンの焦りと本気

 バイデン大統領は、就任初日に米国は地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に復帰した。地球温暖化に対し否定的な立場だったトランプ前政権の4年間で、アメリカの気候変動対策は他国に大幅に遅れた。国際協調が求められる気候変動対策でリーダーシップを取ることは、自国第一主義のトランプ前政権で失った威信を回復するためには避けられない。就任100日を迎える前にサミットを開催したことも、バイデン大統領が脱炭素化を重視する表れだ。

 気候変動サミットで、バイデン政権は、温室効果ガスを「2030年までに2005年比50%削減」とする目標を発表した。オバマ政権が掲げた「2025年までに2005年比26~28%削減」の目標を大幅に上回る。バイデン大統領は、「気候変動はどの国も1国では解決できない。我々はこの課題に対処するため、速やかに行動しなければならない」と述べ、各国へ行動を求めた。多国間協調を求めるバイデン政権と、自国第一主義を標榜したトランプ前政権との違いは鮮明だ。アメリカに応じる形で、日本、カナダ、ブラジルなどは温暖化対策の強化を表明した。

 バイデン政権が踏み込んだ目標を掲げるのは、トランプ前政権との差別化に加え、中国の脅威を感じているからだ。3月、環境負荷の少ない産業構造へ変わることを目指して、2兆ドル(約220兆円)規模のインフラ整備計画を公表した。再生可能エネルギーの拡大や、電気自動車(EV)の普及を通じて、国内の雇用を創出するとも語った。再エネやEVで競争力を高める中国を意識した政策だ。空白の4年間の遅れを取り戻し、中国を牽制しながら脱炭素化で世界をリードする。バイデン大統領の野心が透けて見える。

気候変動サミットのバイデン首相。手前はケリー特使(写真:ロイター/アフロ)