年次教書を発表するロシアのプーチン大統領(4月21日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

プロローグ/大統領年次教書発表

 今年2021年は旧ソ連邦が崩壊してから30周年記念の節目の年になります。

 その節目の年に、ロシア(露)のV.プーチン大統領(68歳)は4月21日、大統領年次教書を発表しました。

 結論から先に書きます。今回の大統領年次教書の内容は、昨年のようなアッと驚くような内容は皆無でした。

 内政に重点をおいた、今年9月のロシア下院選挙用税金ばら播き政策を発表したにすぎず、この点では、(筆者を含め)多くのロシア観察者の期待を裏切る内容でした。

 今回の年次教書の要諦は、プーチン大統領は何を語ったのかではなく、何を語らなかったのかにあると筆者は理解しました。

 演説の最後の部分で外交/軍事問題に触れ、最後は国歌演奏で終わりました。

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックでプーチン大統領と最前列の間は30メートルも空いていたそうですが、TV映像で見る限り30メートルの距離は感じませんでした。きっとそのように映像を操作したのだと思います。

 最前列中央にミシュ―スチン首相が座り、その両隣はマトビエンコ上院議長とヴォロージン下院議長でした。

 昨年秋には「プーチン大統領は健康問題で来年(2021年)1月には辞任する可能性がある」との憶測が流れていましたが、21日の実況中継を観る限り、そのような兆候はありませんでした。

 ただし例年よりも早口で原稿を読んでいたように筆者は感じ、余裕のある演説ではなかったように思えました。

 参加者の約3分の2はマスクなしでした。もちろん、ワクチン接種済み・PCR検査済みと思いますが、全員マスク着用の方が世界に対するインパクトは大きかったと思います。

 本稿では先ずプーチン大統領は何を語ったのか、今回の大統領年次教書を概観した上で、内容を分析したいと思います。