(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年4月16日付)

高額所得者からきちんと徴税できるかは、米国にとって大きな問題だ

 ここで1兆ドル、あそこで1兆ドルと積み上げれば、すぐにまとまったお金になる。

 米内国歳入庁(IRA)が現行法の下で未払いになっている税金をすべて回収すれば、年間1兆ドルの不足は、ジョー・バイデン大統領のインフラ法案を4回まかなえる。

 この税逃れの大半を実行しているのは、米国の納税者の上位1%、ヘッドラインの税率(税控除などを考慮する前の数字)への不満を最も声高に訴えているグループだ。

 だが実際には、金持ちが収める税金は、宣伝されている額よりはるかに少ない。

高税率に文句をつける企業の虚構

 このため、バイデン氏の優先事項は米国の税率を引き上げることではなく、引き継いだ税制をきちんと執行することであるべきだ。

 IRSのチャールズ・レティグ長官は先日、米議会上院での証言で、税逃れは年間1兆ドルにのぼると推計したが、この推計額には、米国の税制を漏れの多さで悪名高いものにしている控除制度やタックスシェルターが含まれていない。

 昨年、スポーツ用品大手ナイキや物流大手フェデックスを含む米国最大級の企業55社は合計でおよそ400億ドルの利益を稼いだにもかかわらず、法人税を一切払っていない。

 米国のヘッドラインの法人所得税率は21%で、バイデン大統領はこれを28%に引き上げたいと考えている。

 しかし、肝心なのは公式な税率ではない。米国の法人税の実効税率はわずか11.2%で、アイルランドよりも低い水準だ。

 米国商工会議所と経営者団体のビジネス・ラウンドテーブルは、米国の法人税率が西側諸国の平均より高いと不満を訴える。実際には、最も低い部類に入る。

 米国の法人税の税収は国内総生産(GDP)比1%相当で、経済協力開発機構(OECD)の平均は同3.1%だ。