ファイザーのワクチンを打つ韓国の高齢者(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 与党候補の連敗という屈辱的な結果に終わった先日のソウル・釜山の市長選挙は、文在寅大統領に対して国民から厳しい評価が下された結果だと言えよう。もっとも、「国民の声を真摯に受け止める」と神妙なコメントを発表した文在寅大統領だが、その裏では、一連の選挙での敗北や支持率低下の原因が「新型コロナ」にあると匂わせるコメントや動きを取り始めている。

 自らの失政を顧みず、責任転嫁に転じようとする文在寅大統領の姿勢とはどのようなものであろうか。

 4月16日に各メディアが文在寅大統領の最新の支持率を報道した。4月13日〜15日にかけて実施された市長選後初の世論調査(韓国ギャロップによる。18歳以上、1005人が回答)によると、文大統領の支持率は30%、不支持は62%だった。選挙前の4月1日の同調査では32%であったため、選挙後、支持率はさらに下落した。

 調査では、「不支持」と答えた人にその理由について尋ねており、不動産政策の失敗が31%、経済政策の失敗9%、コロナ対策の失敗8%と続き、不公正が7%、そして人事問題6%という回答であった。

 文在寅大統領の経済政策や2020年から今年にかけて問題となっているソウル圏を中心とした不動産の高騰、さらに側近や公務員による土地投機をめぐる不正疑惑が国民の間で大きな不満になっていることが見て取れる。これが選挙結果にもはっきりと現れた形だ。

「不支持の理由」の3番目に上がっていた「コロナ対策の失敗」についてだが、韓国内の新型コロナの感染状況を見ると、1日当たりの感染者数は4月16日時点で630人(ソウル217人、ソウル首都圏に当たる京畿道209人、釜山35人、海外入国者7人)となっている。

 4月に入り感染者数が増加傾向にあることもあり、5人以上の集まりの禁止や飲食店の営業時間の制限などが実施されている。2020年の早い段階から屋外の公共の場でのマスク着用が義務化されており、違反すると10万ウォン(日本円で約9700円)の罰金という罰則も設けられている。加えて、4月12日からは屋内でのマスク着用も義務づけられることになった。

 国民の半数以上がワクチンの接種を終え、新規感染者や死亡者の抑え込みにも成功している中東イスラエルは、既に屋外でのマスク着用義務を解除している。ニュースのコメント欄には、「本当にイスラエルが羨ましい。K防疫とは一体何だったのか。文大統領はショーだけはよくできる」といったコメントが書き込まれていた。