(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年4月15日付)

北アイルランドがアイルランドに統一されスコットランドが離脱――。英国政府にとって考えたくもない話題かもしれないが・・・(写真はアイルランドのパブ)

 ダウニング街10番地(首相官邸)で戦略を担当していたある人物は、問題を処理することよりも解決策を探すことの方が痛手になることが時折あると言う。

 政治的なアプローチとして、「その場しのぎ」は過小評価されていると訴える。

 とすると英国(グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国)の将来は、この人物の指摘の適否に左右されるのかもしれない。

 なぜか。

「その場しのぎ」と呼ぶにせよ、もっと力強く「克服」と呼ぶにせよ、これこそが連合王国の存在を揺さぶるブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)の余震から国を救い出すためのジョンソン氏の中心戦略だからだ。

何よりブレグジットのビジョンが優先

 作家ロバート・グレーヴズの表現を拝借するなら、北アイルランドで先日起きた暴動と、スコットランドにおける独立運動の盛り上がりの両方において、ブレグジットは「泥に潜んでいた毒をすべて表面に浮き上がらせた」。

 しかし、そのことを強調したところで、こうなることはEU残留派が警告していたと言って溜飲を下げる程度のことにしかならない。

 ブレグジット反対派の頭に浮かぶような解決策は、首相官邸で支持を得られないだろう。ジョンソン氏は、連合王国のために自分のブレグジットのビジョンを後退させることを、ことあるごとに拒んできた。

 北アイルランドと英国のその他の地方との間に貿易障壁を設けた「アイルランド・北アイルランド議定書」をめぐる今回の騒ぎについても、ジョンソン氏が北アイルランド以外の地方にEUの農産食品規則を導入すれば、摩擦を緩和できるかもしれない。

 しかしそれでは、諸外国、特に米国と貿易協定を結ぶ望みが事実上断たれてしまう。そう、ブレグジットのビジョンの方が優先されるのだ。

 従ってジョンソン首相としては、最も鋭い対立を鈍らせつつ、人々が英国議会の決定に適応してくれることを望むことが唯一の答えになる。連合王国を構成する各国に対して、かなり帝国的な考えを再度適用している格好だ。