深刻化する米中対立は米国内でのアジア人に対するヘイトクライムを増長させている(写真はニューヨークのチャイナタウン)

対中強硬姿勢継続のバイデン政権

 ジョー・バイデン氏が大統領に就任してまもなく3か月になる。

 バイデン政権の対中政策の基本方針について、米国の中国専門家・有識者は、政権発足前からドナルド・トランプ政権時代の強硬姿勢がすぐに修正されることはないとの見方で一致していた。

 政権発足直後は新型コロナウイルス感染症対策をはじめとする米国経済の立て直し、民主主義政治の基盤再整備、黒人差別問題等社会分断問題への対応など、国内問題への対応に追われると見られていたためだ。

 このため、最初の1年間は外交面に力点を置くことが難しく、その後徐々に外交の立て直しに着手していくことになると予想されていた。米国の対中政策の正常化には2年程度を要すると筆者に語った専門家もいた。

 実際にバイデン政権が発足してみると、上記の予想通り中国に対する強硬姿勢が継承されている。

 大統領就任式に台湾の駐米代表を正式に招待したほか、アンカレッジでの米中外交トップ会談の冒頭では新疆、香港、台湾などの問題を巡りメディアの前で激しい応酬が行われるなど、筆者が予想していた以上に米国の中国に対する姿勢は厳しいように見えた。

 バイデン政権の対中政策方針については、最初の1年は修正が難しいが、2年目以降徐々に融和方向に調整されるとの事前予想が多かっただけに、トランプ政権時代以上に強硬路線に転じることは予想していなかった。

 しかし、バイデン政権発足後に見られた対中姿勢は前政権よりむしろ厳しいものに感じられた。

 こうした米国側の厳しい姿勢に対して、中国国内では反米感情が強まり、台湾周辺での武力衝突リスクを懸念する見方も強まるなど、トランプ政権時代の中でもコロナ問題を中心に米中関係の悪化が深刻化した、2020年前半の状況に戻りつつあるような印象を受ける。

 そこで今後の米中関係はどのような展開が予想されるのかについて、米国の中国専門家や有識者にオンラインで面談し、彼らの見方を尋ねてみた。

 以下では、その面談で得られた主な論点を中心に当面の米中関係を展望する。