(英エコノミスト誌 2021年4月10日号)

イランを訪問した中国の王毅外相(3月27日、写真:新華社/アフロ)

中国は、その難しさを思い知る可能性がある。

 中国の指導者層が、中東における大国の行動パターンを根底から変えようとしている。

 近年、この地域の国々と通商協定や協力協定を立て続けに結んできた。それも大抵、ライバル関係か敵対関係にある大国の両方と締結してきた。

 イスラエルとパレスチナの両方と心の通う結びつきがあると言い、北京に特使を派遣して和平交渉を行ってはどうかと双方に呼びかけたこともある。

 相手を信頼することが難しい中東地域で、中国はアラブ諸国にもそうでない国々にも同じように新型コロナウイルスのワクチンや監視技術を提供する、頼りになる国として称賛されている。

 また世界最大の石油輸入国であることから、シーア派の盟主になるつもりのイランと、その大敵であるスンニ派の盟主サウジアラビアの両方にとってかけがえのない貿易相手にもなっている。

 中国の軍艦がイラン海軍と演習を行い、その数週間後にサウジアラビア海軍と演習を行うといったことも、すでに複数回実行されている。

価値観より利害を重視するアプローチ

 中国の指導者層は、地政学に対する中国の独特なアプローチ――価値観よりも利害に重きを置き、ほとんどの外国人はカネで動かせると想定するもの――は、植民地時代の欧州諸国から今日の米国に至るまで数々のアウトサイダーが度々はまり込んだ中東の泥沼を回避するのに役立つと確信しているようだ。

 王毅外相は3月下旬に中東6カ国を歴訪した際、「外部からの干渉によってこの地域にもたらされた悪い結果」を嘆かわしく思うと述べた。

 イランでは25カ年協力協定に署名した。協定の詳細は明らかでないが、イランから原油を安価に購入する代わりに通信網や病院、地下鉄などの建設を支援することが盛り込まれていると見られている。

 世界で最も戦略的な航路のいくつかで港湾を整備することも入っているとの噂もある。

 中国の指導者層は、自分たちの商売重視の姿勢を美徳として前面に打ち出している。習近平国家主席は2016年にアラブ連盟で演説した際、中国は中東に勢力圏とか地政学的な代理などを得たいとは思っていないと述べた。

 そして、経済成長を柱に据えた進歩のビジョンを披露し、「中東の混乱の原因は発展の欠如にある」と明言した。