(写真:西村尚己/アフロ)

(ジャーナリスト・吉村 剛史)

 新型コロナウイルス感染症の世界的流行という国際社会の混乱の中、経済的、軍事的に急成長した中国の国際社会や周辺への強権的姿勢が注目されている。中国の新疆ウイグル自治区におけるウイグル族への人権侵害、台湾に対する軍事的威嚇などは、米国をはじめ民主主義という価値観を共有する国際社会の批判が集中した。

 折しも3月30日には中国の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)常務委員会が、香港の選挙制度見直し案を全会一致で可決した。香港の民主派の政治参加阻止を可能にし、中国共産党の価値観に基づく「愛国者による香港統治」を確実にする制度の構築であり、香港の高度な自治を認めた「一国二制度」の完全崩壊が危惧されるが、そんな中、日本の大手5紙が連日掲載している世界の新型コロナ感染者数の集計において、『朝日新聞』のみが注釈なしに「中国」の集計に「香港」を合算していることがわかった。

大手紙で「香港」を「中国」に含めているのは朝日のみ

 問題の集計は『朝日新聞』が主に国際面に掲載している一覧表「世界の新型コロナ感染者」だ。

 米ジョンズ・ホプキンス大学の集計をもとに感染者数や死者数などをまとめており、4月10日付同紙国際面の集計(9日午後5時現在)の表では「感染者の多い10カ国」として米国、ブラジル、インド、フランス、ロシア、英国、イタリア、トルコ、スペイン、ドイツを紹介。次いで「日本と往来の多い国」としてインドネシア、フィリピン、韓国、中国、シンガポールをあげ、同大学集計に基づく日本や世界全体の感染者数と比較できるようにしている。

 しかし、この一覧表中の「中国」に関しては何の説明、注釈も付されていないため、「これは中国本土だけの数字なのか」「そもそも日本との関係が深いはずの『台湾』『ベトナム』の数字がないが、もしかして『台湾』を中国に含んでいるのか」との疑問を持つ読者も少なくないのが実情で、同社に問い合わせたり、数字の出所である米ジョンズ・ホプキンス大学の集計ホームページにあたったりする必要があるのだ。

今年4月10日付の朝日新聞紙面
拡大画像表示