(英エコノミスト誌 2021年4月10日号)

新型コロナウイルス感染症のパンデミック後は労働者にとって豊かな時代が開けるかもしれない

雇用の回復と政治の変化、技術の進歩が先進国に労働者の黄金時代をもたらす可能性がある。

 一般的な見方によれば、過去40年間は資本を持つ者にとっては素晴らしく、労働者にとっては悲惨な時代だった。

 富める国々の労働者は貿易に起因する競争、絶え間ない技術の変化、ますます不平等になる賃金、景気後退からの弱々しい回復などに耐え忍んできた。

 片や投資家や企業は、拡大するグローバル市場や自由化された金融、低い法人税率を謳歌した。

 新型コロナウイルスが広がる前から、正しく機能していない労働市場というこのカリカチュア(戯画)は誤りだった。

 ここへ来て、経済がパンデミックから立ち直るにつれて資本が労働に優越する構造がひっくり返る時が近づいている。それも、その日は意外に早く訪れる。

 労働市場が壊滅的な打撃を被ってから1年しか経たない今、働く人に素晴らしい世界がもたらされるなどと予想するのは時期尚早だと思われるかもしれない。

 だが、ウイルスの勢いが衰えるにつれて雇用が急速に回復しうることは、今日の米国が示す通りだ。

 米国では2020年春に失業率が15%近くに達していた。それが今では、わずか6%にとどまり、過去数十年における月次の雇用者数増加幅のデータを大きい順に並べると、ベスト10の半分がここ12カ月間の記録で占められている。

 また、世界金融危機の後には一般の人々が認識する「職の見つけやすさ」がそれなりの水準に戻るのに10年近くかかったが、今回はそれと同じ水準をすでに回復している。

 そして、感染拡大の第3波に苦しんでいる欧州でさえ、ウイルス封じ込め策に経済が適応していることから労働市場は予想以上の回復を示している。