日商エレクトロニクスSG事業本部インフラシステム部長の古川武義氏

 最近、重要性を増しているプロジェクトマネジメント(PM)。これは文字通り、プロジェクトの計画立案から完了までを円滑に運営できるよう管理・支援する役割のことだが、その取り組みにあたって、企業間で成果の格差が目立ち始めている。特に課題となっているのがPMを推進する主体であるプロジェクトマネージャーの不足だ。企業でデジタル化案件が増える中、どのようにすればPMのできる人財を育成できるのか。

 今回は双日グループのIT事業部門の中核子会社である日商エレクトロニクスSG事業本部インフラシステム部に学ぼう。同社の取り組みについて株式会社マネジメントソリューションズの次原卓彌氏が聞く。

プロジェクトマネージャーを増やしにくい意外な理由

 どうすればプロジェクトマネージャーを育成できるのだろうか――。日商エレクトロニクスSG事業本部インフラシステム部でも他の企業同様、ここ数年、こうした課題に直面してきた。同部は双日グループ向けにインフラサービスを提供する部署で、ヘルプデスク・PC、サーバー運用保守のほか、それに関連するさまざまなインフラ案件を手掛けている。特に2017年以降、クラウドやデジタルトランスフォーメーション(DX)などの案件が増えるにつれ、プロジェクトマネージャーの育成が急務になっていた。

 日商エレクトロニクスSG事業本部インフラシステム部の部長である古川武義氏は次のように語る。

「プロジェクトマネージャーの必要性は以前から感じていました。しかし、ここ数年は、急速に大型インフラ案件が増える中で、今の陣容、今のPM能力でこなすのは非常に厳しいという認識が強まっていました。人材や予算が潤沢ではない中でも、プロジェクトマネージャーを育成しなければ生き残れない。そんな危機感があったのです」

 実は今、多くの企業がさまざまな方法と戦略を用いてプロジェクトマネージャーの育成に励んでいるが、その数を増やすことに苦労している。その理由の1つが、プロジェクトマネージャーへのキャリアアップに足踏みするエンジニアが増えていることだ。

 古川氏も言う。「私たちの部署では約120人のエンジニアを抱えており、これまで熟練のエンジニアがプロジェクトマネージャーになるというステップを踏んできました。しかし、求められるスキルがエンジニアとプロジェクトマネージャーでは違う。問題は優秀なエンジニアが必ずしも優秀なプロジェクトマネージャーになれるわけではないということなのです」

 もともと大企業ではプロジェクトマネージャーを育成すること自体に行き詰まり感もあった。とりわけ、人材育成については、組織文化が欠かせないファクターとなっている。例えば、縦割りの組織や保守的な体質、自前主義といった組織文化が障壁になることがあるのだ。その点、古川氏らの場合はどうだったのか。

「一部では育成の必要性について認識していたものの、組織全体としてはプロジェクトマネージャー自体の重要性が軽視されている上、育成するとしても、どのように育成すればいいのか、または、エンジニアの技術よりもプロジェクトマネージャーの育成の方を優先していいのか、といった意見が大勢を占めていました。しかし、大型案件の受注をきっかけに、これまでの陣容では乗り越えられない。そんな危機感が増す中で、部署内の意識も次第に変わっていったのです」