若年層の精神疾患の増加に関して、文在寅政権を批判する声も上がる(写真:ロイター/アフロ)

(田中 美蘭:韓国ライター)

 日本では、2020年からのコロナ禍による影響と思われる未成年や若年層、特に女性の自殺が増加傾向にあると報道されている。韓国でも似たような傾向にあり、20代を中心とした若者の精神疾患,とりわけうつ病の急増が顕著だ。精神疾患も自殺も要因は様々だが、1年以上にわたる新型コロナの影響が少なからず影響を与えていることも否めない。

 4月6日、韓国の主要メディア東亜日報に「100万人を超えたうつ病患者」という記事が掲載された。国民健康保険公団が前日に発表したデータによると、精神的な不調で病院の診察を受け、「気分障害」と診断された人は2020年に101万6727人を数えた。100万人を超えたのは2020年が初めてとのことだ。

 気分障害とは気分の状態が安定せず、高揚と落ち込みが一定期間続く症状でうつ病、躁うつ病とも呼ばれる。日本では、気分障害はこの2つが合わさったものという定義がされているが、韓国では単にうつ病と呼ばれている。

 記事の中で紹介されている事例として、23歳の患者のケースを見てみよう。2020年10月、初めて就職した会社を職場の雰囲気に馴染めず退職した後、転職活動をしたものの上手くいかず、退職後2カ月ほどすると、無気力な状態に陥り、加えて夜に寝つくことができない不眠症状も現れ始めたため、メンタルクリニックを訪れたところうつ病と診断されたとのことであった。

 また別の事例では、カナダに留学中だった20歳の学生のケースとして、新型コロナの世界的な感染拡大により、休学を余儀なくされ韓国に帰国。オンラインでも授業は受講できるものの、先行きがまったく見えない状況の中、家にこもっているうちに食欲不振や動悸の症状が出たため、2020年夏にやはりメンタルクリニックを受診し、うつ病の診断が下されたという。現在までカウンセリングと薬物治療を継続している。