(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年4月5日付)

トランプ前大統領はいまなお次期大統領選に意欲満々だ

 1期で終わった米国大統領が2度目のチャンスを得られる可能性は限りなく低い。投票所で喫した敗北を認めるからだ。

 一方で、ドナルド・トランプ前大統領は支持者に向かって、自分は「3回」連続で民主党を倒す衝動に駆られるだろうと話している。

 大半の共和党支持者はいまだに、昨年の選挙が盗まれたと考えている。

 トランプ氏が2024年の大統領選に再度出馬した場合、保守派から強力な対抗馬が出てくることを想像するのは難しい。

 ある意味では、トランプ氏はこの状況についてジョー・バイデン大統領に感謝すべきだ。就任最初の2カ月間で国民に人気の歳出法案を推進することで、バイデン氏は共和党からポピュリスト的な経済議論を奪ったからだ。

 トランプ氏は2016年に、大きな政府を受け入れることが党の指名候補獲得の障害にならないことを証明した。

 リバタリアン(自由至上主義者)の衝動は、今日の共和党支持者の間ではほとんど認知できないほど薄く、多くがバイデノミクスに満足している。

 それゆえ共和党のエネルギーは次第に、文化的な恨みにつぎ込まれるようになっている。共和党に投票する有権者の半数以上が、「伝統的な米国生活様式」を守るための武力行使を支持している。

大きく異なる2つの国民感情

 選挙で選ばれて公職に就いている共和党員は今、自らをよく「労働者階級の党」と呼ぶ。

 西側民主主義の観点に立つと、共和党のイデオロギーは、ドイツのキリスト教民主同盟(CDU)はもとより例えば英国の保守党よりも、マリーヌ・ルペン氏が率いるフランスの極右政党・国民連合(旧「国民戦線」)との共通点が多い。

 共和党は徐々に白人至上主義に近づいている。

 これは米国の民主主義の未来にとって何を意味するのだろうか。2021年第1四半期は、大きく異なる2つの国民感情の物語を与えてくれた。

 年明けから最初の3週間、トランプ派以外の米国人は、バイデン氏が宣誓就任する前にトランプ氏がどうにかして選挙人団選挙でのバイデン氏の勝利を覆すのではないかという不安に襲われていた。

 1月6日に米議会議事堂で起きた暴力的な襲撃は、そうした不安に信憑性を与えた。

 その後、バイデン氏が新型コロナウイルスのワクチン接種と同氏の立法計画への熱意に乗って動き出すと、事態が好転した。

 トランプ氏の悪夢のような政権末期を忘れ、米国が民主的な健康を取り戻したと宣言するのは、いとも簡単だ。

 だが、それは時期尚早だ。

 二大政党の一方が今、公然とゲームのルールを拒絶し、2020年の選挙の再現が必ず反対の結果を生むよう、協調的な対策を講じているからだ。