ミナがメンバーだった頃のAOA(写真:アフロ)

(田中 美蘭:韓国ライター)

 米国では俳優、女優、歌手などセレブたちがこぞって、自らの支持政党を公言したり、大統領選挙の時期になると支持や批判合戦をSNSやメディアを通じて展開したりする光景がよく見られる。これとは対照的に、韓国では芸能人たちが政治に関わる発言、特に批判は好ましくないとされており、敬遠されがちである。しかし、最近、女性アイドルグループ、AOAのメンバーだった女優がインスタグラムで政権批判とも言える意見を表明し、波紋が広がっている。

 AOAは2012年に8人組の女性アイドルグループとしてデビューした。一時は日本でも活動するなど人気を博していたが、2016年頃からメンバーの脱退や入れ替わりが激しくなり、2021年現在はヘジョン、ソリョン、チャンミの3人体制になっている。

 このうち2019年にグループから脱退し、現在は女優として活動をしているミナ(本名クォン・ミナ)が3月28日、自身のインスタグラムに突如として政権批判とも取れる書き込みをした。

 その一部を挙げると、慰安婦問題をめぐる不正疑惑などで批判された正義連の元代表、尹美香(ユン・ミヒャン)氏が国会議員の座に居座り続けていることに対する批判、文在寅大統領が新型コロナのワクチンを接種したかどうか疑惑への疑問、さらに現代社会の矛盾などにも言及しており、意思を自由に表現することが尊重されるべきだとの訴えも書かれている。

 クォン・ミナ自身、過去にグループのメンバーからいじめを受けたことや、学生時代の性的暴行被害を告白したり、自殺未遂騒動を起こしたりするなど何かとお騒がせな印象もある。そのため今回のこの書き込みをめぐりフォローやマスコミからは戸惑いの声が上がったが、「勇気がある発言だ」「よく言ってくれた」とクォン・ミナの発言を称える書き込みも見受けられる。

 彼女の発言の背景にどのような経緯があったかは知る由もないが、著名人、一般人を問わずに、「生きにくい社会」や「失望続きの政治」に対する苛立ちが高まっているという見方もできる。