(写真:宮沢洋、以下も)

(宮沢 洋:BUNGA NET編集長、編集者、画文家)

「池袋」「フランク・ロイド・ライト」といったら、思い浮かぶのは「自由学園明日館」(1921年、国指定重要文化財)だろう。我がOffice Bungaの事務所から徒歩十数分の住宅街にある“池袋の宝”だ。その南東側にライト風のオフィスビルがあるのをご存じだろうか。自由学園の講堂(設計:遠藤新)ではない。それは南西側。明日館を背にして左手の方にある3階建てのオフィスビルが今回の巡礼地だ。婦人之友社の本社ビルである。

 このビルがずっと気になっていた。婦人之友社は自由学園の創立者である羽仁もと子、羽仁吉一夫妻が1903年に創業した出版社。これも、ライトの弟子である遠藤新(1889~1951年)の設計だろうか…。だが、そこまで古いものには見えない。では、自由学園に近いことを配慮したどこかの設計者がライトっぽくデザインしたのだろうか…。

 そんなぼんやりした関心のまま日々が過ぎていたなか、2019年、NHKの朝ドラ(連続テレビ小説)「なつぞら」でこの建物の外観が何度も映り、これは池袋民としてちゃんと調べなければと思い立った。ちなみに、「なつぞら」は女優の広瀬すずがアニメーター・奥原なつを演じたドラマで、この建物の外観がアニメ制作会社「東洋動画スタジオ」の社屋として使われた。

 ネットなどで調べてみると、婦人之友社の設計者は遠藤楽(らく)、竣工は1963年と分かった。遠藤楽(1927~2003年)は、遠藤新(あらた)の次男で、父親の新が亡くなった後の1957年から58年にかけて、米国ウィスコンシン州のタリアセン(ライトのアトリエ)で学んだ。つまり、親子二代でライトに師事したわけだ。