写真:森田直樹/アフロスポーツ

サッカー界で注目のふたりが新刊を発表し、話題だ。

ひとりは、日本代表・不動のボランチとなった遠藤航の『「楽しい」から強くなれる~プロサッカー選手になるために僕が大切にしてきたこと~』(ハーパーコリンズ・ジャパン)。20代中盤にして大きく飛躍した男の姿は多くの人に勇気を与える。その裏にあるブレない哲学は必読だ。

もうひとりが岩政大樹。サッカー界屈指の理論派として、上武大学サッカー部の監督を務める岩政は、日本サッカーの成長スピードが世界にかなわない明解な理由を「原則の不在」と捉え、具体的なチーム作りを考察した『FootballPRINCIPLES 躍動するチームは論理的に作られる』(SYNCHRONOUS BOOKSを上梓した。

いずれも、売れ行き好調だと言う。

どこまでいっても探求をやめない、学び続ける姿勢を持つふたりは、2月に「PITCH LEVELラボ」で対談をしている。日本サッカーの課題や成長するための思考法が示されたその内容をご紹介する。

理想のボランチ像に近づいてきた

岩政大樹(以下、岩政):前の対談の時(2019年6月)はまだベルギー時代でしたね。だいぶ色々なものが変わったのかな。

特にあの頃は世界のトップレベルというものが手探りだった感じだと思いますけど、今はブンデス1部でもやれて、手応えとして色々なものが分かってきているところだと思います。まず、自分の思っていたトップクラスのブンデスというところでやってみて感覚としてはどうですか?

遠藤航(以下、遠藤):ブンデス1部初挑戦は、思った以上にやれたなという感覚が個人的にはあります。

正直ブンデス1部に昇格が決まった時や開幕前は、自分がどれだけやれるのか、映像で見るのと実際にやる感覚は全然違うだろうなとか、そういう思いがありました。

戦っていく中で、チームとしても個人としても状態は良いし、個人的にも少しずつ成長しながらブンデス1部でもやれているなと思うので充実しています。

岩政:ある程度やれるなと思ったのは、ボールを取り切れるなという感覚が思っていたよりあったという感じですか?

遠藤:そうですね。守備のところで言うと1対1でボールを奪うところ、攻撃に関してはプレッシャーある中でも「間」でボールを受けて縦につけられるとか。

そのあたりのポジショニングとか細かい部分も自分で変えながらですけど、良くはなってきているなと思います。

岩政:イメージとしては、ベルギーでのポジションとか役割からだいぶ変わったというのはあると思います。ご自身のプレースタイルみたいなところも自分が思い描いていたところにだいぶ近づいているのかなと思うんですが、それって(自分で)変えてきたところももちろんあるんですよね。

遠藤:そうですね。やっとというか、ようやく自分の描いていた理想のボランチ像に近づいている感じです。

もともとベルギーリーグは特殊なリーグで、(前に話をしましたけど)すごい個にフォーカスしていました。組織よりとにかく個の局面を多く作る。

ですから、(戦術的に見れば)「間延び」してるように見えたこともあると思います。ただ、1対1勝負は本当に多かったです。

その点でブンデスはより組織的に戦いつつ、1対1をどう上手く出していくか。

そこら辺は僕にとってはすごいやりやすいなという風に思っていますね。