(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年3月25日付)

トルコは民主主義国という地位を失うかもしれない(写真はイスタンブール)

 3月20日土曜の朝早く、強大な権力を振るうトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が、ドナルド・トランプ的なことをやった。

 米国の前大統領がツイッター上でよく起こした癇癪(かんしゃく)の代わりに、エルドアン氏は大統領令を出した。

 中央銀行の総裁を解任した1つ目の大統領令は、経済的な自殺行為に等しい。

 10年前にトルコが真っ先に署名した、女性に対する暴力を阻止する条約から脱退した2つ目の大統領令は、すべての市民を守る民主主義国としてのトルコの評判の残骸を葬り去るかもしれない。

お気に入りの娘婿も犠牲に

 手短に振り返っておこう。昨年11月、トルコの通貨リラが急落していた。

 同国は、エルドアン氏の娘婿のベラト・アルバイラク氏が財務省のトップに就いて以来、2年間で2度目の通貨危機に入ろうとしていた。

 大きな権限を持つ、無愛想なアルバイラク氏は、エルドアン氏が要求する低利資金と消費を基盤とする高度経済成長を追求した。

 金利は「諸悪の根源」だとする義父の信念に屈服し、インフレを抑制するために利上げすることを拒み、失敗に終わったリラ防衛に1000億ドル以上のお金をつぎ込んだ。

 追従することを拒んだ中銀総裁は次々と解任された。

 突如、甘やかされてきたアルバイラク氏も週末の犠牲者になった。

 エルドアン氏が、アルバイラク氏の前任の財務相だったナシ・アーバル氏を中銀総裁に据える人事を発表すると、リラは反発した。

 内情に詳しい関係者らは、忠実だが経済的にはオーソドックスで批判的なアーバル氏がエルドアン氏を説得し、トルコ経済が危機にあり、それとともに大統領と与党・公正発展党(AKP)のレガシーも危うくなっていることを理解させたと話している。

 そして、この3月20日、トルコの金融政策の信頼性を取り戻したアーバル氏も更迭され、トルコ資産に対する売りを引き起こし、債券と株式が大きく下げるなかでリラは当初、14%急落した。