(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年3月24日付)

米国の巨大な財政出動が吉と出るか凶と出るか、世界は固唾を飲んで見守っている(写真はニューヨーク)

 新型コロナウイルス感染症「COVID-19」のパンデミックによるショックからの回復が始まった。

 最大の原動力は何と言ってもワクチンの実用化だが、我々自身が経済活動とソーシャル・ディスタンシングを上手に組み合わせられるようになってきたことや、大規模な財政・金融政策支援――とりわけ重要なのは米国のそれ――も効いている。

 とはいえ、危険が去ったわけではないこと、そして学ばねばならない教訓がまだ残っていることを忘れてはならない。

 世界が依存し合っているという現実を、パンデミック以上に的確に教えてくれるものはない。

 しかし、それが実際に学んだことなのだろうか。不安に駆られた我々は、どちらかと言えば外向きよりは、内向きになった。

加速する景気回復

 それでも景気回復の知らせが聞かれるのは良いことだ。経済協力開発機構(OECD)が先日発表したエコノミック・アウトルック(経済見通し)中間報告には、2021年と2022年の経済成長見通しに明らかな改善が見える。

 2022年第4四半期における世界全体の国内総生産(GDP)は、昨年12月時点の予想値を2.5%も上回ると見込まれている。

 ワクチンの奇跡を除けば、景気急回復の唯一最大の理由は、米国による総額1兆9000億ドルの財政支援パッケージだ。

 この経済対策は、実施1年目の通期GDPを3.8%押し上げると予想されている。そしてその影響はほかの国々にも波及し、一例を挙げれば、ユーロ圏のGDPを0.5%押し上げると考えられている。

 しかし、難題やリスクが一掃されたわけではない。

 第1に、米国が取り組んでいるのは目を見張るほど大胆な財政・金融政策の実験だ。

 バイデン政権はすでに、インフラ整備やクリーンエネルギー、教育にさらに3兆ドルの資金を投じる支出パッケージにまで言及している。合算すれば、米国のGDPの4分の1に近い金額になる。

 大幅な増税が実施される可能性は小さいため、対策に要する資金の大半は米連邦準備理事会(FRB)が融通することになる。

 ローレンス・サマーズ元財務長官は、「これらは米国で過去40年間に取られたマクロ財政政策のなかでも最も無責任なものだ」と言い切っている。

 少なくとも、最も大胆なものではある。バイデン政権はオバマ時代のミスを回避したいと思っている。しかし、これでは正反対のミスを犯してしまう恐れがある。

 こうしたリスクを取りたい気持ちは理解できるが、もし景気への刺激が大きすぎた場合、その打撃は深刻なものになりかねない。