訪韓したブリンケン米国務長官とオースチン国防長官。中央は文在寅大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 3月25日、北朝鮮のミサイル発射に対して、米国防省のインド・パシフィック統括部隊のカフカ報道官は、「我々は北朝鮮が東海に対してミサイルを撃ったことに注目している」と発表した。米国は、この公式声明の中で、「日本海」ではなく「東海」という言葉を使ったのだ。

 この発言は、日本側のクレームを受けて訂正されたが、それでも「『日本海または朝鮮半島の東海岸沖にあたる水域』と表記すべきだった」との表現であった。米国が日韓どちらに配慮しているかは一目瞭然だろう。

 日本のメディアや、在日および在米の米国専門家の多くは、バイデン政権になってからの対中強硬姿勢に気をよくしてきたところだろうが、こうした細かな変化に注意する必要がある。

 今回の「東海」発言はどのように受け止めるべきなのだろうか。

バイデン政権への貢献を形で示した韓国

 3月15日から17日までブリンケン国務長官とオースチン国防長官は訪日し、日本が求める東アジア政策を語ったと言える。この後、ブリンケン国務長官の韓国滞在は3月18日のみ、オースチン国防長官は同19日までと、両閣僚の日韓訪問としては日本重視を感じさせるものだった。

 その後、ホワイトハウスが菅首相の訪米を受け入れたこともあり、この流れはバイデン親政権の出方を注視してきた日本政府を安心させるものだった。しかも、岸防衛省相はオースチン国防長官からの「台湾海峡有事の際の協調」にも合意した。まさしく、日米同盟新時代の始まりである。

 ところが、その陰で韓国政府は在韓米軍2万8500人に対する韓国側の支出を2021年度は10億ドルに増やすと米国に伝えていた。韓国政府はトランプ政権の1年半にわたる増額要求を拒否し続けていたが、2019年および2020年にと比べて13.9%の増加である。

 しかも、韓国は2025年まで年平均6.1%の支援増を約束していた。ブリンケン国務長官とオースチン国防長官の韓国滞在日数が日本と比べて少ないのは、最大の案件が解決していたからである。

トランプ政権の時は在韓米軍の駐留経費増額に難色を示していた文在寅政権だが(写真:AP/アフロ)

 文在寅大統領は、トランプ大統領に対する以上の価値ある配慮をバイデン大統領に見せたのだ。オバマ政権時代、副大統領だったバイデン氏は親韓の態度を示していた。そのバイデン政権の外交政策において、最初に貢献した同盟国となったのである。

 バイデン大統領の最初の対面会談の相手になることにこだわった日本に対して、韓国は実績づくりに貢献することを選んだと言える。これに気をよくしたバイデン政権は、訪韓時におけるブリンケン国務長官とオースチン国防長官との会議では、敵対国としての中国を名指しした批判を避け、北朝鮮の完全非核化にも触れないという二つの点で、文政権に配慮した。