3月1日、ジャカルタ郊外のショッピングモールで、従業員と取引業者向けに中国シノバック製のワクチン接種が実施された(写真:ロイター/アフロ)

 コロナウイルス対策の決め手としてすでに多くの国民へのワクチン接種が進んでいるインドネシアで、新たに接種がはじまるアストラゼネカ社製のワクチンにイスラム教で禁忌されている「豚の成分に由来する物質」が含まれていることが分かり「接種すべきでない」「いや問題ない」という“ハラル論争”が沸き起こっている。

自ら「接種第1号」となりワクチン接種を国民に勧めたジョコ大統領

 世界で第4位という約2億7000万人の人口を抱え、そのおよそ88%がイスラム教徒というインドネシアでは、イスラム教徒が体内に摂取することを許された「ハラル(許されたもの)」と「ハラム(禁じられたもの)」が厳格に区別されている。

 豚肉、豚に由来する成分、犬、アルコールなどが典型的な「ハラム」となる。飲食物として体内に摂取する場合だけでなく、厳密には化粧品や整髪料、歯磨き粉、塗り薬などにも適用され、ハラルであること証明する「ハラル印」の有無がイスラム教徒にとっては購入の際の絶対的な指針となっている。

 インドネシアでは2020年3月にインドネシア国内で自国民のコロナ初感染を記録して以来、感染者数、感染死者数は急増を続けており、3月25日現在で感染者数は147万6452人、感染死者数は3万9983人と東南アジア諸国連合(ASEAN)で最悪の数字を記録し続けている。

 ジョコ・ウィドド政権は効果的なコロナ感染拡大防止策を打ち出せず、PCR検査厳格化や移動の制限、保健衛生上の規則などの厳格化で懸命に対応しようとしているが、感染者拡大には歯止めがかかっておらず、ワクチン接種が頼みの綱となっている。

 2021年1月13日にジョコ・ウィドド大統領が国内でのワクチン接種第1号として接種を受けたのを皮切りに政府要人、軍や警察などの治安要員、宗教関係者そして医療従事者などに対する接種が続いている。これまでに接種を受けた人は500万人以上に上っている。

1月13日、インドネシアで最初にコロナワクチン接種を受けるジョコ・ウィドド大統領(提供:Indonesian Presidency/Abaca/アフロ)