3月18日、訪韓して文在寅大統領(右)を表敬したアントニー・ブリンケン国務長官(中央)とロイド・オースティン国防長官(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 米国のアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官が3月15~17日に日本、次いで17~18日に韓国を相次いで訪問した。日本では茂木敏充外務大臣、岸信夫防衛大臣と日米2+2を行い、菅義偉総理を表敬。韓国では鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官、徐旭(ソ・ウク)国防部長官と米韓2+2を行い、文在寅大統領を表敬した。

 両長官は、東京で日米での緊密な協力に合意して、韓国に乗り込んだのだが、韓国では米韓の立場の相違に直面し、共同声明でも「中国」と「北朝鮮の非核化」が抜けるなど基本的な部分で異見が目立つ結果となった。

 共同声明や、閣僚の冒頭発言、共同記者会見の内容から判断して、米国は文在寅政権との間において中国の問題で対立するのは避け、北朝鮮に対する日米韓の協力に焦点を絞って韓国に働きかけたようである。にもかかわらず、対北朝鮮問題で共通認識は得られず、日韓関係についても具体的な進展があった様子はない。両国の発表文を見る限り、これまでの双方の立場から大きな歩み寄りは見せていない。

 それでもブリンケン国務長官とオースティン国防長官は、会談の冒頭発言や記者会見で今後韓国に期待する協力内容を明示している。韓国に米国との同盟を維持する意思があるのであれば、その行動の選択の余地は狭まってきているといえるだろう。

 ただ、今のままの韓国の対応であれば、日米韓3国協力体制の中では、「日米協力」を軸に動いていくのではないだろうか。

日米2+2、中国・北朝鮮への対応で共通認識

 ブリンケン長官は東京での2+2会談の冒頭で「同盟を再確認するだけでなく、実行するために日本に来ている」と述べ、オースティン長官も「一緒に自由で開かれたインド太平洋を守りたい」と抱負を語った。

 日米共同発表文では、中国の行動について「既存の国際秩序と合致しない」「ルールに基づく国際体制を損なう、地域の他者に対する威圧や安定を損なう行動に反対する」と名指しで中国を非難した。そして中国が海警局を準軍事組織に位置付ける海警法には「深刻な懸念」を表明した。台湾海峡の平和と安定は重要だとし、連携を申し合わせた。これに中国が「内政干渉だ」と猛反発した様子をニュースで見た人も多いだろう。