関与が宥和になるのを避ける方法
従って、中国と関わっていくことが唯一の賢明な選択となる。
しかし、これが宥和政策になってしまうのを避けるには、どうすればいいのか。これこそが、本誌エコノミストが印刷に回る頃に中国と外交トップ会談を行ったバイデン政権が直面する難問にほかならない。
英国がつい先日明らかにしたような戦略の見直しの核心もここにある。
戦略の見直しは、西側陣営の守りの強化から始まる。大学やクラウド、エネルギー・システムを含め、各種機関やサプライチェーンを中国の国家的干渉から守るべく補強しなければならない。
グローバル化を支えてきた今では軋んでしまっている米国主導のインフラ――各種の条約、資金決済ネットワーク、技術標準――などを近代化し、中国が組み立てている競合システムに代わるものとして諸外国に提供できるようにしなければならない。
平和を維持するためには、インド、日本、オーストラリアと米国による日米豪印戦略対話(クアッド)のような提携を強化したり台湾の防衛力を底上げしたりすることにより、中国が軍事行動を起こす際のコストをつり上げなければならない。
打たれても立ち直る力を強化すれば、門戸を開いたり人権問題について強硬なスタンスを取ったりできるようになる。
悲劇的な戦争で終わらない限り、向こう何十年も続く対立において、自由主義諸国の政府は全体主義に代わるビジョンを打ち出すことによって、全世界の開かれた社会の勢いを維持するのに寄与できる。
普遍的な価値観と人権について語ることは、西側の覇権を維持し、中国の台頭を抑えつけるためのケチな戦術ではないことをはっきり示すことが肝要だ。
それは、企業が重大な過ちを断固拒否すること、例えば、自社のサプライチェーンから強制労働を排除することを意味している。
長く続く闘いに備えよ
西側がモラルに欠けた行動を取っていたら、中国のナショナリズムの脅威は増すばかりだ。
しかし、筋の通った人権擁護を何年も続けていけば、中国国民が同じ自由を政府に要求するのを後押しすることになるかもしれない。
中国の指導者層は、独裁制とテクノクラシー(技術による支配)を、不透明さと開放を、無慈悲な振る舞いと商業面での予測可能性とをそれぞれ両立させる方法を見つけたと思っている。
香港が弾圧された以上、自由主義社会はかの国からの挑戦をこれまで以上に意識すべきだ。今、これに対処すべく立ち上がり、行く手の長い闘いに備える必要がある。