2019年12月に行われた東アジア E-1サッカー選手権決勝ラウンドでの日韓戦(写真:ロイター/アフロ)

 盛り上がるどころか、罵詈雑言が飛び交う泥沼の様相となってきた。3月25日に日産スタジアムで行われる予定のサッカー・日本代表対韓国代表戦のことである。

 今月10日に開催が正式発表されたが、日韓両国の国民の間から期待の声はほとんど聞こえてこない。熱烈なサッカーファンを除けば、明らかに断固反対の意見が大多数を占めている。新型コロナウイルスの感染収束には現状で光明が差しているわけでもなく、特に開催地の日本は試合会場の神奈川県に現状で緊急事態宣言が発令されているにもかかわらず日韓戦実施が強行発表されたのだから批判されるのも無理はあるまい。

東京のコロナの新規感染者、増加傾向の中で日韓戦

 その神奈川県を含む1都3県で発令中の緊急事態宣言について、菅義偉首相が今月21日に全面解除する意向を明らかにした。だがその意向を公表した3月17日当日の感染者数は東京で1カ月ぶりに400人を超え、宮城でも過去最多の107人となるなど、各地で看過できない数字が出始めている。変異ウイルスによる死者数も増加傾向にあり、全く楽観できるような状況にないことは素人でも分かる。

 それでも政府が、尾見茂会長ら新型コロナウイルス感染症対策分科会から半ば強引に「問題ない」との言質を引き出す形で、緊急事態宣言解除に踏み切ろうとしているのは、東京五輪・パラリンピックの強行開催を念頭に置いているからに他ならない。

 その足がかりとなるプレイベントとして絶対に成功させなければならない聖火リレーが宣言解除の4日後となる今月25日に福島県のサッカー施設「Jヴィレッジ」からスタートする。世界各国から視線が向けられるイベントだけに、スタート当日の開催地・東京に緊急事態宣言が発令されたままであれば日本のコロナ対策は確実に疑問を投げかけられ、東京五輪への参加を辞退する国が続出する可能性も出てくる。それだけは何が何でも避けねばならないと政府、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会(組織委)は水面下でスクラムを組み、国民からの批判を度外視してシレっと21日の宣言解除を目論んでいるのだ。だから政府にとって今月7日から2週間延長された緊急事態宣言は21日が限界ギリギリであり、この当日に解除されるのは言わば「予定通り」なのである。