太平洋上で実弾の射撃訓練を行う第7艦隊所属・米ミサイル駆逐艦「ラファエル・ペラルタ」(3月14日、米海軍のサイトより)

1 三重の包囲環構想は修正されるか

 米国では2021年1月にジョー・バイデン政権が発足した。ドナルド・トランプ大統領の時のような中国に対する厳しい政策が継続されるのか、世界が注目している。

 筆者は既にインド太平洋戦略の核心となる考え方を「始動、中国の息の根を止める三重の包囲環構想」(JBpress、2020.11.2、https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62730)として提言した。

 そこで、バイデン政権のこれまでの政策からどのように変化するのかを探ってみた。

2 なぜ進化しないインド太平洋戦略

 構想や戦略という文言が消えてしまった「インド太平洋」は、まさに顔のない「のっぺらぼう」としか言いようがない。

 元々、この構想は2012年に安倍晋三前首相が「セキュリティ・ダイヤモンド構想」として発表されたものが原型だ。

 日本、ハワイ(米国)、オーストラリア、インドを結ぶひし形の枠組みで、枠内を日米豪印が連携して護るという「防衛戦略」である。

 枠の中には東・南シナ海も含まれており、明らかに膨張する中国を意識したものであった。

 それを発展させ、日本が提唱したのが「自由で開かれたインド太平洋」構想であった。

 しかし、「構想」は「戦略」を意識させ、中国を刺激してはいけないとの理由から、いつの間にか意味不明な「インド太平洋」という文言だけとなり、日米豪印のクワッドだけが独り歩きするようになった。

 問題は日本と、米国の対中戦略の本気度にある。