尖閣諸島に向け約50隻の台湾・香港の漁船がアクティビストを乗せ出航。その上空を海上自衛隊のヘリがホバリングして警告(2004年3がtう28日、写真:ロイター/アフロ)

 尖閣諸島の領有権問題を再考する。

 米国は公式には、領有権問題では特定の立場を取らないとする一貫した中立政策を堅持している。

 ところが、2021年2月23日、米国防総省のジョン・カービー(John Kirby)報道官は記者会見で、「尖閣諸島の主権に関する日本の立場を支持する」と述べた。

 だが、同報道官は26日の記者会見で、23日の記者会見での自身の発言について「訂正したい(I need to correct)。尖閣諸島の主権をめぐる米政府の方針に変わりはない」と述べ、「誤りを遺憾に思う。混乱を招いたことを謝罪する」と述べた。

 わが国の各種メディアは、この奇妙な出来事にあまり関心を示さなかったが、筆者は大いに興味を持った。

 ジョン・カービー報道官は退役海軍少将であり、また過去に国防総省報道官や国務省報道官を務めた広報分野の大ベテランである。

 かつて、ジョン・ケリー国務長官(当時)は、退役後のカービー氏を国務省報道官に登用するにあたり「『非の打ち所のない判断力』や、メディアを完全に理解していることが起用の理由であると説明した」(産経ニュース2015.5.14)ことがある。

 筆者は、優秀かつ経験豊富なカービー報道官は言い間違ったのではなく、本心をつい口にしたのであると見ている。

 なぜなら、かつて沖縄を占領・統治した米国政府、とりわけ米軍人は尖閣諸島が日本の領土であることを百も承知であるからである。

 筆者は、カービー報道官が過去に第7艦隊または在日米軍司令部勤務がないか調べたが確認できなかった。

 本稿の目的は、米国による沖縄の占領・統治・返還に関する情報資料に基づき、尖閣諸島が日本固有の領土であることを再確認することである。

 以下、初めにカービー報道官の記者会見における発言内容について述べ、次に、米国が占領・統治・返還した沖縄の範囲などについて述べる。

 最後に、米国の領土問題に関する中立政策の背景について述べる。