フェイスブック ロゴ(写真:AAP/アフロ)

 米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、米フェイスブックは、オーストラリアで取った記事掲載禁止の強硬措置で同国政府から譲歩を勝ち取った。だが、今後は他国で同社に対する監視が強化され、より厳しい規制が導入される可能性があるという。

豪州での強硬策が他国の規制強化につながるリスク

 フェイスブックは、IT大手に対し記事使用料の支払いを義務付けるオーストラリアの法案に反発。2021年2月18日、豪国内サービスで、同国報道機関と海外報道機関の記事を遮断。豪報道機関の記事を世界中で閲覧できなくした。

 報道によると、オーストラリアではニュース記事のほか、慈善団体や公共サービス、政府機関、中小企業など数十の公開ページのコンテンツも一時削除された。

 フェイスブックは声明で、「不注意で削除したものもあった」と認めた一方で、「豪政府がニュースコンテンツの定義を明確に示しなかったため、我々は広い定義で解釈せざるを得なかった」と説明。「我々に対し、無制限に金額を要求してもよいとする法に反対する」と述べた。

 こうした反発を受け、豪政府は法案を修正。フェイスブックや米グーグルなどのIT大手が同法の適用を回避できる条件を盛り込んだ。つまりフェイスブックは強硬策によって、豪政府から譲歩を引き出すことに成功した。

 フェイスブックは2月22日、記事掲載禁止措置の撤回を発表。同25日にはオーストラリアの連邦議会が修正法案を可決した。

 法案は当初、「報道機関が記事使用料の支払いを求めた場合、IT大手は交渉に応じる義務を負い、双方が合意できなかった場合は政府が任命する仲裁人が使用料を決める」というものだった。

 修正後は、「IT大手が豪メディア産業の持続可能性に大きく貢献しているかどうかを考慮し、豪財務相が法を適用するかどうかを判断する。仲裁人の介入はIT大手と報道機関が合意できない場合の最終手段」などとした。

 こうした中、フェイスブックやグーグルは、主力サービスでの対価支払いを拒否しつつ、新たに立ち上げたサービスで報道機関と提携関係を築く戦略を打ち出した。

 だが、フェイスブックの強硬策は世界に波紋広げた。英国やカナダ、米国の議員や閣僚らは同社を非難。カナダの文化遺産相はオーストラリアと同様の法を準備中だと明らかにした。欧州連合(EU)は加盟諸国に対し、報道機関の対価請求権強化を狙った著作権法を成立させるよう働きかけている。