(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年2月26日付)

半導体を制する者は世界を制する?

 人類の優先事項が建設費用で測定されるとしたら、そのランキングは、神への畏敬の念、物理学の未来、そしてコンピューターチップの生産の順になるだろう。

 メッカの大モスクを取り巻く建築物は、現代で最も高くつく建設プロジェクトと見なされている。

 ただし、フランスの国際熱核融合実験炉(ITER)の竣工時には、その建設費に抜かれる可能性がある。

 だが、3番目にコストが高い建物はほぼ間違いなく、半導体受託生産会社(ファウンドリー)の台湾積体電路製造(TSMC)が約200億ドルを投じて台湾に建設している巨大半導体工場だ。

 来年稼働した時には、新工場はサッカー場が22個収まる規模のクリーンルームを擁し、そこで極薄の意味を定義し直す寸法で半導体が製造される。

 TSMCのシリコンウエハーは厚さわずか3ナノメートル(nm)で、人間の爪が3秒間に伸びる長さと同じだ。

地政学と切り離せなくなった半導体生産

 この莫大な額の設備投資は、コンピューターチップに対するほとんど飽くことのない需要と、台湾半導体メーカー各社の支配的な地位、そして現代の製造技術の高度化を浮き彫りにしている。

 TSMCの半導体は、米アップルの新型「iPhone(アイフォーン)」から医療機器、F35戦闘機まで、あらゆるものに動力を供給しており、世界の半導体販売の約55%を占めている。

 だが、半導体の生産は、地政学的な必須条件にもなりつつある。

 米国は中国ハイテク産業に対する締め付けの一環としてTSMCに圧力をかけ、それまで最大顧客の1社だった中国・華為技術(ファーウェイ)への半導体供給を停止させた。

 半導体輸入に対して、石油輸入よりも多額の資金を費やしている中国は、海外サプライヤーへの依存度を下げるために国内の半導体産業を育成している。