(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年2月24日付)

バイデン政権の大規模な財政出動はいったい何をもたらすのか

 景気を刺激する財政出動の規模は、いくらなら過大なのだろうか。

 ジョー・バイデン大統領の率いる米政権の目標を支持する経済学者たちの間で、この問いをめぐる議論がかまびすしい。

 それは悪くないことだ。政策というものは議論されるべきだ。

 今回の危機でも2008年の世界金融危機の時と同様に、対策が足りないリスクと過度になるリスクを評価して比較しなければならない。

 だが、一つはっきりしていることがある。2009年に講じられた景気刺激策が過小だったからといって、それをはるかに上回る規模の対策を今回講じるのが正しいとは限らない、ということだ。

 政策というものは、不確実性やリスクのバランスを認識しながら、その時々の状況に適しているかを見極めなければならない。

 筆者は、原則的には大規模な財政出動に反対ではない。実際、2009年1月には、民間セクターのバランスシートの傷が癒えるまで米国は国内総生産(GDP)比10%の財政赤字を続けるべきだと主張した。

 そのすぐ後には、西側諸国が当時直面していた危険性を理解するには、日本から学ばなければならないと論じた。

 また、今回のパンデミックに際しても、これは非常事態でありそれこそ戦争のようなものだと筆者は当初から認識していた。実際、政策は戦時体制で実行する必要があった。

金融危機や戦争とパンデミックの違い

 とはいえ、パンデミックを金融危機や戦争とは別物にする要因が何であるかを認識しておくことは極めて重要だ。

 新型コロナウイルス感染症「COVID-19」は金融危機とは異なり、需要をいつまでも抑制しそうな民間部門の不良債権を大量に作り出すとは限らない。

 それどころか、収入がちゃんとあるのに支出をあまりしてこなかった人々のバランスシートは、実を言えば改善している。

 また、パンデミックは戦争とは異なり、物的資本を破壊しない。従って、COVID-19に対する恐怖心がひとたび弱まれば、景気は非常に力強く回復する可能性が十分にある。