連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第40回。新規感染者数が下がりきらないまま緊急事態宣言が解除されようとしているが、医療と経済の両立しないのだろうか? 飲食業の現場の声を讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)が聞く。

 2月28日、6府県の緊急事態宣言が前倒しで解除されました。一方、首都圏の1都3県については、新規感染者数の減少のスピードが鈍化していることなどから宣言は継続され、7日に解除するかどうかは再検討すると示されました。

「医療か経済か」は非常に難しい問題です。この1年間、医療と経済は「あちら立てればこちらが立たず」という枠組みで語られてきました。しかし、本当に両立しないのでしょうか。私は常々、「一部の誰かにしわ寄せがいくことなく、皆で苦労をシェアする社会であるべき」と訴えてきましたが(第33回参照)、共存する道を探すためには、医療の現場に立つ者として経済の現場を知る必要があると思いました。そこで、経済的に大打撃をこうむっている業種のひとつ、飲食業の現場でがんばっておられる伊藤一秀さんに話を伺いました。

新宿では大小問わずすごい勢いで閉店

讃井 伊藤さんは2店舗を経営されているそうですね。

伊藤 高校を卒業してからずっと飲食業で仕事をしていまして、13年前に独立して、新宿で『まるぴん』という小さな焼鳥屋を始めました。

 さらに6年前に焼鳥をメインにした和風ダイニング『KOYOI 炭火焼と旬菜』も始め、現在この2軒を経営しています。まるぴんは8坪で20席くらい。一方のKOYOIは18坪で30席。まるぴんより、ゆったりとした作りになっています。そのKOYOIのほうもようやく軌道に乗ってきたところで、コロナが来てしまいました。