尖閣諸島を中国の侵略から守るには日本自身が本気の防衛姿勢を示さねばならない(写真は横須賀に配備されている米駆逐艦内、弾道ミサイル防衛システム運用担当者、2月22日撮影、米海軍のサイトより)

 日本や米国の政権が代わるか、折々の首脳会談や外相・防衛相の会談で確認されるのが尖閣諸島の防衛問題で、大統領や高官による「尖閣への5条適用」発言に拘泥・安堵する日本の姿は奇妙である。

 これでは「日米同盟頼みありき」の意識が先に立っているし、一方で、米国は本当に尖閣諸島の防衛で約束を果たしてくれるのだろうかという危惧があるからである。

 ジョー・バイデン大統領との電話会談、外相・防衛相の相手長官との会談も行われ、米国をつなぎとめる手立てはできたが、国民はおろか、首相をはじめ外相、防衛相らからは、さっぱり尖閣防衛の決意が伝わってこない。

 中国が「核心的利益」に拘泥する意思は強固で、中華人民共和国海警法(以下、海警法)を施行して以降、尖閣諸島への侵攻懸念が一段と高まってきた。

 もはや、「米国は尖閣を守ってくれるか」という愚問を繰り返している時ではない。

中国のサラミ戦術に嵌る世界と日本

 香港の地政学的位置、尖閣諸島の所在地がいかに中国にとって重要であるかは言うまでもない。香港は南シナ海を北から扼くし、尖閣諸島は東シナ海を南から扼する。

 また、日本海に突き出た半島の韓国は、文在寅政権の親北姿勢に中国・習近平政権の対韓政策が重なって、対日米関係軽視に限りなく近づきつつある。

 香港、尖閣諸島、そして朝鮮半島を自国領並みの管轄権下に置けば、その間に所在する台湾と東シナ海をわがもの顔にできる。

 南シナ海の領有権主張と相俟って第1列島線の正面を押さえていることを意味し、いつでも容易に西太平洋に進出して、勢力を誇示することが可能となる。

 香港がこれから20年以上も一国二制度で英国をはじめとする自由世界の影響下に置かれ、尖閣諸島が日本の管轄下であり続けるならば、「核心的利益」と位置付ける南シナ海や台湾、そして東シナ海が思うようにできない。

 こういう意味で、香港や尖閣は中国の広大な領土からすると針の先ほどの大きさでしかないが、戦略上からは中国にとって枢要な場所であり、軍事用語でいうならば「緊要地形」である。