(英エコノミスト誌 2021年2月20日号)

貿易相手国は利益を得る。だが、真の不確実性の源泉はFRBだ。
米国がくしゃみをすれば、世界のほかの国々が風邪を引く。だが、米国が熱を出した場合は何が起きるのだろうか。
国内総生産(GDP)が3.5%減少した厳しい2020年の後、米国は今年、ワクチン接種が進むにつれて経済活動が普通に近い状態に戻るだけでも力強い景気回復を享受することになる。
コロナ禍からの回復と景気刺激策の影響
しかし、それ以上のことをやるかもしれない。
もしジョー・バイデン大統領の新型コロナウイルス対策法案が可決・成立すれば、今年の景気刺激策の規模は計2兆5000億ドルを突破する可能性がある。
その場合、米国のGDPは議会予算局(CBO)が推計する「潜在的な」水準――その経済がインフレ圧力を高めることなく生み出せるGDPの水準――を軽く上回ってしまいかねない。
そのため米国の経済学者の一部は今、物価と賃金の上昇に加速の兆しがないか監視し始めている。
しかし、米国経済は世界から孤立して活動しているわけではない。
もし景気が過熱すれば、その影響は国境の内側だけでは収まらない。景気回復の状況次第では、米国経済の過熱が諸外国に恩恵をもたらすこともあり得るし、逆に新たな悩みの種になる可能性もある。
外国との貿易を一切行わない閉鎖経済では、支出が少なすぎると失業と物価押し下げ圧力が生じる。逆に支出が多すぎると雇用は増加し、物価もいずれ上昇する。
だが、貿易を行う開放経済では、需要の変化による効果の一部が外へ漏れ出していく。
例えば、支出の急減は輸入品に対する需要減と関係しているかもしれず、その場合、景気不振の痛みの一部が外国に輸出される。
2007~09年の世界金融危機の際には金融市場のトラブルが世界中に大打撃を与えたが、その災難を比較的免れていた国々も、欧米との貿易を通じたつながりのために寒気を覚えた。
ある推計によれば、この時の米国の需要減の約4分の1、そして欧州の需要減の5分の1はその他の国・地域の負担となり、貿易を介して伝わった。