(英エコノミスト誌 2021年2月20日号)

電気が消えたら誰もごまかせない。
降れば土砂降り、雪なら停電――。それがテキサスの状況だ。
「ひとつ星の州」と呼ばれるテキサス州は、冬の嵐によって記録的な大雪と三十数年ぶりの低温に見舞われ、数百万人が明かりも暖房もない状況に陥った。
2月16日には最も多い時で450万世帯が停電した。需要の負荷が大きくなりすぎたことから、送電系統全体がダウンするのを避けるために供給側が電力利用をいったん整理しようと試みたのがその理由だった。
米国のエネルギーの都で起きた大停電
大都市ダラスなどにある高層ビルも、節電のために丸ごと真っ暗になった。
雪道をものともせず車で走り、空き部屋のある数少ないホテルにチェックインしたが、到着するなりホテルも停電になった人もいれば、スキーウエアに身を包んで自宅にこもり、明かりと暖房の復旧を待つ人もいた。
テキサス州全土で、「輪番」であるはずの停電が何日も続いた。被害の算定はまだ早い。これまでに命を落とした人の数は20人を超えている。
自動車事故、暖を取るためにつけた火による火事、自動車のなかで暖まろうとしたことによる一酸化中毒などがその主な原因だ。
嵐のために新型コロナウイルス感染症「COVID-19」のワクチン配送も遅れており、この週に予定されていた約100万人への接種はできなくなる恐れがあった。
また、電気小売事業者のなかには卸売電力料金の急上昇で打撃を被り、経営破綻するところが出てくるだろう。
雪はテネシーなどほかの州でも降ったが、テキサス州の降雪量は飛び抜けて多く、その重みに耐えきれなかった。
テキサス州民は当然、米国のエネルギーの都の住民が信頼できるエネルギー供給を当てにできないことに憤慨している。どうしてこうなったのかと誰もが問いかけている。
端的に言えば、今回の停電の原因は、同州の送電系統を運用するテキサス州電気信頼性評議会(ERCOT)が嵐の結果生じるエネルギー需要を適切に予想しなかったことにある。