(朝比奈 一郎:青山社中筆頭代表・CEO)

 今から約2年前の2019年4月、ちょうど平成から令和に切り替わる直前に、私はこのJBpressに《「令和」初頭に高確率でくる日本の苦境を乗り切る道》という論考を寄稿しました。

 令和という時代の最初の数年は日本にとってかなり厳しい時代になりそうだということを、短期、中期、長期の循環論をもとに予想したものです。先日、何気なくツイッターを見ていたら、この記事を「預言どんぴしゃ」とのコメントとともにリツイートしてくれている方がいらっしゃいました。新型コロナの感染拡大までは予想していたわけではありませんが、確かに大きく外してはいなかったと思います。

 しかしそれを喜んではいられません。なにしろ、ただでさえ循環論に従えば、経済が落ち込み、政治の混乱が起きそうな時期だと予言していたのに、ダメ押しのようにコロナまでやってきたわけです。日本は現在、相当な苦境に立たされているのですから。

(参考)「令和」初頭に高確率でくる日本の苦境を乗り切る道
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56219

衰退か、再浮上か、瀬戸際に立つ日本

 世界の歴史を少々振り返れば、このような立場に立たされた国がいくつか思い浮かびます。大航海時代の先駆けとなり、16世紀には広大な植民地を保有し繁栄を極めたポルトガルは、富の源泉だった香辛料貿易の衰退、スペインによる併合などにより徐々に国力が低下していきます。そして1755年、リスボン大地震により国土が壊滅的被害を受け、国家としても低迷を余儀なくされました。

 あるいはこれも古い例ですが、16世紀に現在のペルーにあったインカ帝国が、わずかな人数のスペイン軍によって征服されてしまいました。インカ帝国がいとも簡単に征服されたのは、スペイン軍とともにやってきた天然痘のせいだと言われています。インカ人にとって未知のウイルスだった天然痘は、わずか数年でインカ帝国の人口の60~94%を死に追いやったと言われています。

 日本は今から10年前に東日本大震災を経験しました。そして現在は、新型コロナに襲われています。つまり、かつてポルトガルやインカ帝国が直面したのと同様の危機にあるとも言えるのです。日本はここから衰退の一途を辿るのか、あるいは踏ん張って勢いを取り戻すのか、まさに現在は瀬戸際にあるのです。