充電施設で充電しているテスラ車(写真:AP/アフロ)

(山中 俊之:神戸情報大学院大学教授/国際教養作家)

広告主への忖度でないことを祈るばかり

 再生可能エネルギーやEVは、気候変動問題と関連させながらも新しいビジネスの可能性といった文脈で報道されることが多い。あるいは、EV最大手のテスラ株価急騰などバブルの側面からの報じられ方もある。

 しかし、人類を地球との共生に向かわせる「再エネ革命」は産業革命以降の大きな変革を地球にもたらすだろう。さらに、化石燃料に左右されてきた国際政治にも変化をもたらすことは間違いない。

 2021年の元旦、合同で新聞各紙に「クルマを走らせる550万人へ」という見出しで自動車の業界団体による新聞広告が掲載された。自動車メーカーや部品メーカー、ガソリンスタンドなど自動車に関連する産業の裾野の広さと経済波及効果をアピールした広告だ。

 自動車業界は部品や販売を含め裾野が広い。多くの雇用を生み出しており、それら雇用を守ることが重要であることは論を俟たない。しかし、この広告が、EV(電気自動車)への世界的なトレンドに逆行することにつながることを意図するものであれば、素直には喜べない。

 なぜなら、EVはガソリン車よりも部品数がはるかに少なく、部品メーカーにとってEV移行は死への門出になりかねないため、日本の自動車業界にとってEVに対し拒絶感があるためだ。日本の自動車メーカーの一部には、日本政府がEVに舵を大きく切ることに懸念もある。

 EVについては、各種ビジネス誌で大きく取り上げられることも多く、日本メディアにおいて決してマイナーなテーマではない。しかし、テレビなどの情報番組はもちろん、報道番組でも取り上げられることはあまり多くないように感じる。巨大広告主である自動車メーカーに対する過剰な忖度が理由でないことを祈るばかりである。

 欧米を中心とした世界では大きく報道されても、日本国内での報道が小さいテーマは他にもある。