東シナ海に展開する米強襲揚陸艦から離陸する海兵隊のヘリコプター(2021年2月11日、米海軍のサイトより)

 ようやく現実を直視するようになってきた――。

 ジョー・バイデン大統領が中国の脅威をようやく真摯に受け止め始めるようになったとの見方が首都ワシントンで広がっている。

 バイデン氏は中国の習近平国家主席と日本時間2021年2月11日、2時間の電話会談を行った。

 同氏は翌12日、ホワイトハウスで開いた少数の上院議員との会合で、「グッド・カンバセーション(いい会談)だった」と印象を述べたが、同時に「米国が何もしなければ、中国は我々を打ち負かすだろう」との警戒感も口にした。

 実際に使われた言葉は、中国が「Eat our lunch(我々のランチを食べてしまう)」という表現で、米国では中国の脅威論を語る時に散見されるフレーズである。

 冒頭で「ようやく・・・」と記したのは、実はバイデン氏は2019年5月、「中国が我々を打ち負かすって?冗談でしょう。彼らは悪い人たちではないし、競争相手でもない」と、中国に対して短慮で、楽観的な見解を示していたからだ。

 バイデン氏は同発言の1カ月前、大統領選への出馬表明をしたばかりで、当時は中国に対して宥和的な態度を示していた。

 その見方にはライバルの共和党内からだけでなく、民主党バーニー・サンダーズ氏なども「中国が経済的な競争相手でないと装うことは間違っている」と批判していたほどだ。

 ただバイデン氏が当時、中国に宥和的なビジョンを抱いていたのには理由がある。

 バラク・オバマ政権の副大統領時代から習近平氏とは何度となく顔を合わせ、当時の中国側のリーダー像が残っていたからである。