(英エコノミスト誌 2021年2月13日号)

経済成長率よりも低い金利が続いていることで、財政出動にためらいがなくなりつつある

先進国と同様に、多くの新興国でも金利は名目成長率を下回っている。

 もし往年の財務大臣たちが、今日の後輩たちが検討しなければならない借入金額を目にしたら、きっとショックを受けるだろう。

 だが、その借入金利を見たら、あまりの低さに同じくらい驚くはずだ。

 多くの国々では今、政府債務の金利が名目経済成長率を当分下回ると予想されている。

 言い換えれば、一部の経済学者が「経済成長修正後金利(GCIR)」と呼ぶ金利がマイナスにとどまるということだ。格付け会社S&Pグローバルが今月公表した見通しによれば、2023年には裕福な国のすべてがこの状態になる。

先進国が気にしなくなった財政の限界

 このシナリオを受けて、かつて国際通貨基金(IMF)の首席エコノミストを務めたオリビエ・ブランシャール氏など一部の経済学者が、米国や日本、ユーロ圏諸国といった国々の財政の限界について考え直すようになっている。

 政府は「国債残高の対国内総生産(GDP)比のマジックナンバーのようなものに注目」するべきではない――。

 ブランシャール氏は先月、インドのアショカ大学で行った講義でこう語り、そのような数字は「これまでも逆効果だったし、今使うとしたらもっと逆効果になる」と続けた。

 しかし、財政の計算がめちゃくちゃになっているように見えるのは、裕福な国々だけの話ではない。

 経済規模で見た新興国の上位60カ国のうち、金利が経済成長率を下回る国は53カ国にのぼる公算が大きい。なかには目を見張るほどの差がつきそうな国もある。

 S&Pの見立てによれば、2023年のGCIRはインドがマイナス3.6%で中国がマイナス6.5%、アルゼンチンに至ってはマイナス33.8%になるという(図1参照)。

図1