(英フィナンシャル・タイムズ紙 2021年2月9日付)

一般論としては、「アングロスフィア(英語文化圏)」について延々と話し続ける人には用心するのが賢明だ。
英国では、この概念には大英帝国や第2次世界大戦に対するノスタルジアが強く漂う。英語を話す国々の歴史について全4巻の著作を残したウィンストン・チャーチルが思い出される。
しかし最近になって、アングロスフィアの一員であるという概念が意外にも今日的な重要性を帯びてきている。
中国政府と対立する政策の導入を増やしてきた英語を話す国々が、ますます強引になっている中国の振る舞いをきっかけに結束しつつあるのだ。
米国のトランプ政権は中国と貿易戦争を始め、太平洋における海軍の活動を強化した。ジョー・バイデン大統領が率いる新政権においても、中国政府との対立を辞さない姿勢が多少緩和されながらも続くことは明らかだ。
新大統領は、中国との「熾烈な競争」を約束した。
米国のアントニー・ブリンケン国務長官と、中国の外交を統率する楊潔篪共産党政治局員が初めて行った電話会談は、とげとげしいものになった。
「新冷戦」を危惧する欧州
しかし、米国と同盟関係にある欧州諸国のなかには、中国との間で新たな冷戦が始まるのではないかと非常に心配しているところもある。
欧州連合(EU)は中国と新たな投資協定を結び、バイデン陣営にショックを与えた。米国との協議を求める声を無視して合意したからだ。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は最近の演説で、反中国感情によって世界が複数のブロックに分断されかねないとわざわざ警鐘を鳴らした。フランスのエマニュエル・マクロン大統領も同様な発言を行っている。
これとは対照的に英国、オーストラリア、カナダは、米国を以前よりも強く支持している。
これらの国々はすべて、ここ2年間で中国との関係が急速に悪化している。その結果、中国の台頭は脅威であり対抗しなければならないという米国の見方に傾いている。