(英エコノミスト誌 2021年2月13日号)

医療従事者ですらワクチンの接種を約半数が拒んでいるという現実は重い

COVID-19は「エンデミック」になるかもしれない。各国政府は対策を考え始める必要がある。

 奇跡にも限界はある。新型コロナウイルス感染症「COVID-19」に対するワクチンは、多くの人々の図々しい希望よりも早く登場し、期待以上の有効性を発揮している。

 もしこれがなかったら、1億5000万人を超える人々がパンデミックで命を落とす恐れがあった。

 ただし、世界各地で予防接種が進む一方で、ワクチンによってCOVID-19が一掃されると考えることが間違っていることが明らかになった。

 この病気は今後何年も居座ることになる。そして、特定の地域や集団にはびこる「エンデミック」になる公算が大きい。

 COVID-19が最初に襲ってきた時、各国政府は文字通り不意を突かれた。今度は事前に対策を練っておかねばならない。

ワクチン開発は奇跡

 ワクチン接種を奇跡だと呼ぶことは、誇張でも何でもない。ウイルスが最初に認識されてから1年あまりしか経っていないのに、医師はすでに1億4800万回もコロナワクチンを投与した。

 ワクチン接種で世界の先頭を走るイスラエルでは、まだ接種を受けていない60歳未満の人々の新規入院者数が過去最高になっている。

 それとは対照的に、大半が接種済みの60歳以上では新規入院者数が1月半ばをピークからすでに40%近く減っており、これからさらに減っていく見通しだ。

 軽症や無症状の感染者になることを防ぐには至っていないものの、患者が死亡したり入院を要する重症になったりすること――これこそ本当に重要なことだ――をワクチンはおおむね防いでいるように見える。

 また、これまでに得られたエビデンスは、一部のワクチンがウイルスの拡散も防いでいることを示唆している。

 拡散に歯止めがかかればパンデミックはかなり減速するだろうし、病院の集中治療室(ICU)をパンクさせる患者の急増を招くことなくロックダウン(都市封鎖)を緩和することも容易になる。

 こうした知見と、これから得られる知識は、データがさらに積み上がるにつれて補強されていくだろう。

 しかし、こうした良い知らせにもかかわらず、コロナウイルスはまだ人類を放免していない。COVID-19は今後も広く流行し続けるだろう。