東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長辞任を表明した森喜朗氏(写真:アフロスポーツ)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴って2021年に延期された東京オリンピック・パラリンピック。だが、年が明けても新型コロナは猛威を振るっており、東京五輪の再延期や中止を唱える意見が増えている。世論調査を見ても8割が「再延期・中止」。大会組織委員会の森喜朗会長の度重なる失言・放言も、開催ムードに水を差している。

 コロナ禍の中、東京五輪を予定通り実施すべきなのか。「戦後」の生き字引であるジャーナリストの田原総一朗氏と、東京都知事として五輪招致に尽力した作家の猪瀬直樹氏が激論を交わした。

※動画チャンネル『田原総一朗×猪瀬直樹の「元気を出せニッポン!チャンネル」(仮)』もあわせてご覧ください。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64100

日本人は前向きな発想を持つべき

田原総一朗(以下、田原):2021年に延期された東京オリンピックだけど、反対論が根強い。世論調査でも8割の人が再延期か中止すべきと言っている。猪瀬さんは東京都知事としてオリンピック招致に走り回り、2013年9月に招致を実現させた、まさに張本人だよね。今どう思っているの?

猪瀬直樹(以下、猪瀬):「困難をどう切り抜けていくのか」ということを考えるかどうかの問題だと思うんです。悲観論を唱える人は「何もやらない」ということを言っているわけだけども、「どうやって実現するか」という前向きな発想を持った方がいいと思う。

 そもそもどういう経緯でオリンピックを招致したのか、みんな忘れています。

東京五輪の開催を巡り激論を交わした田原総一朗氏と猪瀬直樹氏のYouTube動画はこちら!!

田原:なんでオリンピックを招致したの?

猪瀬:僕の前の都知事だった石原慎太郎さんからの流れがあります。

田原:石原慎太郎。猪瀬さんは副知事だったよね。

猪瀬:ええ。2020年の東京オリンピック招致活動の前、2009年に「2016年オリンピック」の招致活動をしました。都の条例でディーゼル車規制を実施するなど、石原都政は地球温暖化を意識した政策を打ち出していたので、地球環境を前面に押し出してね。ゴミと建設残土で埋め立てられた中央防波堤の埋め立て地に森をつくり、オリンピック会場にしようと考えたのもその一環です。今で言うカーボンニュートラル(※)の世界をアピールしたんです。

※二酸化炭素の排出量と吸収量をプラスマイナスゼロの状態にすること

田原:地球の気温が上がったら人類は生きていけない。そこで、2016年にパリ協定が発効した。トランプ政権は離脱しちゃったけど、ヨーロッパの先進国は2050年の温暖化ガスゼロを打ち出した。ちなみに、石原さんがオリンピックの開催招致を決めたのはいつごろ?

猪瀬:2006年ですね。

田原:パリ協定の前だよね。すごいんだよ、それが!!

猪瀬:ただ、2009年の招致活動は残念ながらブラジルのリオデジャネイロに敗れてしまいました。それで、次は2020年を目指そうと動き始めた矢先に、東日本大震災が起きた。大津波が来て、東北の沿岸が甚大な被害を受けた。日本人は皆、元気をなくしていたわけです。

 さらに言えば、その前のリーマンショックで日本経済はガタガタになりました。リーマンショックによる経済的な落ち込みと、東日本大震災のショックが重なり、「日本はもう展望がないんじゃないか」と日本人は落ち込んでいた。そこで、2020年という希望をつくり、日本を元気づけるということが東京オリンピックの大きな目標だったんです。みんな忘れているかもしれないけど。

田原:でも、国民の多くはコロナ禍の中で開催は無理なんじゃないかと思っているよね。特に、共産党の志位さんあたりが言っているけれども、国民全体にワクチンが行き渡るのは夏過ぎになるんじゃないか、下手をすれば来年になるんじゃないか、という指摘がある。