(英エコノミスト誌 2021年2月6日号)

アンディ・ジャシー氏は絶好調の会社を引き継ぐ。アマゾンが抱えるジレンマへの対処がそれで容易になるわけではない。
米国で3番目に大きな市場時価総額を誇るアマゾン・ドット・コムは2月2日、過去最高の四半期決算を発表した。
新型コロナウイルス感染症「COVID-19」のパンデミックが消費者にステイホームを強いたことから、売上高は前年同期比で44%増加し、初めて1000億ドルを突破した。実に見事な業績だ。
しかし、この日のメーンイベントは決算ではなかった。
アマゾンは同じ日に、創業者のジェフ・ベゾス氏が30年近く務めた最高経営責任者(CEO)の座を今夏に降りると発表したのだ。
同社を離れるわけではない。ベゾス氏は上階に移り、取締役会長に就く計画だ。
本人によれば、そうすることで「アマゾンの重要な計画に関与」し続けると同時に、手がけてみたいほかのこと――特に宇宙旅行、気候変動との戦い、2013年に買収したワシントン・ポスト紙――に割く時間を増やせるのだという。
後任のCEOにはアンディ・ジャシー氏が就く。高収益を上げているクラウドコンピューティング事業、アマゾン・ウエブ・サービス(AWS)の立ち上げと運営を担ってきた古参幹部だ。
巨大企業を築き上げたカリスマ創業者

このニュースが流れると、木製のドアをリサイクルした机で1994年に書籍の通信販売を始めたベゾス氏に向け、熱烈なメッセージが数多く発信された。
証券会社のバーンスタインは、ベゾス氏を「史上最高」と持ち上げた。
ベゾス氏が成功を収めた人物であることは間違いない。
2019年にアマゾンが発送した荷物は35億個。この惑星に住む人間の2人に1人が受け取った計算になる。
しかもそれは、パンデミックがオンラインショッピングを急加速させる前の話だ。
経営姿勢は厳格で、カネを使いたがらない。従業員には、毎日が切羽詰まったスタートアップ企業での「初日」であるかのごとく過ごすよう求めてきた。
そうしたスタイルも手伝って、アマゾンはスマートスピーカーから動画配信、広告、クラウドコンピューティングへと新しい事業に次々に進出してきた。