文在寅大統領(中央)と金命洙大法院長官(右)。左は金長官夫人。2017年9月25日撮影(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 韓国で、金命洙(キム・ミョンス)大法院長(最高裁判所長官)の「ウソ」を巡って、同院長の辞任を求める声が巻き起こっている。

 金大法院長は、裁判で文在寅(ムン・ジェイン)政権の意向に反する判決を出す裁判官は昇進させず、代わりに進歩系弁護士グループである「ウリ法研究会」と「民主社会のための弁護士会(民弁)」に所属する弁護士を司法府の幹部に取り立て、裁判所を左翼的性向の濃い機関に変えてきた人物である。

 さらに今回、与党「共に民主党」の意向を忖度し、司法府の独立を棄損していた実態が暴露されてしまったのだ。

辞任申し出た判事の辞表を突き返し、国会による弾劾の餌食に

 昨年から国会で弾劾の対象として取りざたされていた釜山高裁の林成根(イ・ソングン)部長判事が病気を理由に金大法院長に辞任を申し出たところ、国会で弾劾しようとしているのに辞任されたら自分が困るとして、辞任を認めなかったというのだ。しかも金大法院長は、その事実を問われた際にはそれを否定してきた。実はそれが「真っ赤なウソ」であることが明白な証拠によって露見し、大法院長としての資質と見識が疑われる事態となっているのだ。

 政府与党に忖度して物事を判断しようとする大法院長の下で、裁判所が三権分立を維持することは不可能だろう。まして最も法律と事実関係に忠実であるべき裁判官、しかもそのトップにあり、全裁判官の手本となるべき大法院長が国民の前と国会の場で平気で「ウソ」を述べることは正常な民主主義国なら本来ありえないことである。それが現実となっているのが現在の韓国なのだ。

 金命洙氏は、明らかに文政権に忠実な裁判官で司法界を固めようとしている。韓国の司法機関は、金氏によって、「法の番人」ではなく、政治抗争に明け暮れる「文在寅政権の番犬」になり果てようとしている。