2011年12月、ヤンゴンの自宅でインドネシアのマルティ・ナタレガワ外相(当時)の訪問を受けたアウン・サン・スー・チー氏(写真:ロイター/アフロ)

 2月1日、ミャンマーで政変が起きた。アウン・サン・スー・チー国家最高顧問兼外相ら政権要人の身柄を拘留するなどして実質的なクーデターを決行、政権を掌握したミャンマー国軍はその後、国軍支持の閣僚を新たに任命、一般のテレビ放送を中断させ、1年間の非常事態を宣言するなど着々と軍政の地歩を固めている。

 2月4日には国軍がフェイスブックへの接続を遮断するなど情報統制を強め、国民の間に「反クーデター気運」が蔓延することを阻止しようとしている。

 これに対し米バイデン政権がミャンマー国軍関係者の資産凍結など制裁を示唆するなど、欧米諸国は「クーデター批判」「スー・チーさんらの解放」を求めて国際的な圧力を強めようとしている。

ミャンマーに関与すべきか否か、分かれるASEAN

 こうした中、東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国の中には、その原則である「内政不干渉」を掲げてミャンマーの政変を静観しようとする国がある一方で、「民主的な選挙で選ばれた政権の武力による転覆」を批判し、「憲法による民主的手続き」を尊重するとして「重大な懸念」を表明する国もあるなど、反応が分かれている。

 ASEANの大国で、かつては「盟主」ともいわれたインドネシアでは、「ミャンマー民主化の歩みを中断させてはならない」との機運が高まろうとしている。インドネシアはかつて軍政による強権支配が続くミャンマーのASEAN加盟(1995年)を後押ししたこともあったし、それ以前にはミャンマー軍がインドネシア・スハルト長期独裁政権の施政を「軍制のお手本」としたりしたこともあった。さらに軍制からの民主化への移行にあたり、インドネシアの民主化プロセスをミャンマーが参考にするなど良好な関係を維持してきた経緯がある。

 また今回再び自宅軟禁となったスー・チー顧問とインドネシアのメガワティ・スカルノプトリ元大統領は、ともに独立・建国の父の実娘であること、軍政や独裁政権に対する民主化運動のシンボルとして国民の期待を一身に集めた時期があったことなど共通点も多く、両者の間には個人的な信頼関係が存在している。それだけ両国にとってもう一方は特別な存在なのである。

 そうした両国関係を背景にインドネシアでは「ASEANの内政不干渉という建て前はあるものの、ミャンマーの民主化を逆行させる事態を避けるためインドネシアが果たすべき役割はある」として、政府特使を派遣して仲介あるいは調停に乗り出すべきだとの意見が噴出している。