国家資格が武器になると考える転職希望者は少なくない・・・(写真:UTS/イメージマート)

 30~50代のビジネスパーソンはとかく悩みが多い。異業種参入に伴う競争の激化やコロナ禍による需要減など会社を取り巻く環境は厳しさを増すばかり。その中で、営業であれば案件獲得、プロダクト担当であれば売れる製品・サービスの開発、経営企画であれば社内のDX推進など、会社を伸ばし存続させるために、社内の同僚や社外の取引先とともに手持ちのプロジェクトを成功させなければならない。

 他方、子供の教育やリタイア後の生活費など将来の資金繰りの不安は尽きず、社内での出世の道が徐々に見えるに従って、組織の歯車として生きるか、何か別のやりがいを見つけるか、残りの人生について思案し始める。

 経営コンサルタントとして事業承継や中小企業のM&A、企業研修や資格予備校の講師をしつつキャリアコンサルタントを務める森琢也氏は、そんな迷える30~50代に寄り添い、彼らの人生にとってベストな選択ができるよう支援してきた。これから定期的に、森氏が出会った人々の決断を通して、ビジネスパーソンが抱える悩みと新しい働き方、新しい生き方を提示していく。

(森琢也:中小企業診断士、キャリアコンサルタント)

「資格を一つでも持っていればな・・・」という声をたまに耳にします。筆者も中小企業診断士という国家資格を持っているため、会社員時代は「資格を持っているとつぶしがきくね」「キャリアチェンジの時に武器になるよね」「専門性があって羨ましいよ」と言われることが多くありました。

 ところが、実態はどうかというと、資格は持っているだけで稼げるわけではありません。もし独立開業するならば、ゼロから顧客基盤を作り、売り上げ拡大の努力と工夫をしなければ稼いでいくことすら難しい時代になっています。

 資格を武器に就職や転職を考える場合、例えば中小企業診断士であれば、経営コンサルタントの国家資格と言われることもあり、「コンサル業界への転職に有利に働くのでは」と考える向きもあるかもしれません。ただ、コンサル業界に特化した転職エージェントの知人は、「むしろマイナス効果になりうる」とさえ言います。

 それはなぜか。今回は、中小企業診断士の資格を武器に転職活動に挑戦した内山泰章さん(35歳・仮名)の例を基にお話いたします。