なぜ豆類の生産量は少ないのに豆乳を選んだのだろうか(写真:PantherMedia/イメージマート)

 自身も地域資源の「6次産業化」に取り組む片桐新之介氏(地方創生コンサルタント)による「なぜ地方創生はうまくいかないのか」の2回目。今回は、成功とは言いがたい特産品開発プロジェクトを通して、失敗の原因を紐解いていく。

1回目から読む

大失敗に終わった自治体の新事業プロジェクトの顛末

(片桐新之介:地方創生コンサルタント、第6次産業コンサルタント)

 2019年11月に、栃木県の地元紙「下野新聞」で、このような記事が掲載された。

塩谷町、6次化事業廃止 国に2652万円 返還へ 売り上げ目標1億、実績7万円

 要するに、地域の新しい特産物を開発しようと町は取り組んだが、委託先であるJAで不正な支出が見つかったということだ。しかしもっと問題なのは、3年間で取り組んだ事業での成果が「商品開発1件 売り上げも7万3800円(その後の調査で9万8700円)」にしか過ぎなかったこと、そしてそこに投じられた資金は、国の交付金と町の負担分併せ3902万400円ということである。

 これがもし食品企業の新事業であれば、開発担当役員の首が飛ぶくらいでは済まないかもしれない。いったいなぜこんなことになったのか。

 当該の塩谷町では、「新たな6次産業化の構築と新産業育成業務検討特別委員会」を設置し、2020年7月に中間報告を行っている。

 20ページにわたるその中間報告書を見ると、「1次下請けから2次下請け以下への不透明な契約内容」によって不当に多くの費用が費やされたことがうかがえるが、そもそも論として「なぜこの事業をするに至ったのか」が全く見えてこない。

 特産品とは、その土地の経済の軸であり、市民にとってのシンボルでもある。そして、その製造には多くの人がかかわり経済効果を生む。この事業の名称である「新たな6次産業化の構築と新産業育成業務」が全くその効果を生まなかったばかりか、現在でも1次委託先であるJAしおのやと塩谷町の間で係争状態にあるというのは非常に嘆かわしいことである(※JAしおのやが町から返還を求められている「不正支出分」は存在しなかった、というのが争点である(参考記事)。

 ここまでこじれることはめったにないが、このように「特産品開発」や、特産品のプロモーションが失敗に終わった事例は数多い。